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分水嶺から網走へ
I came from the watershed to Abashiri.
分水嶺から網走へ
I came from the watershed to Abashiri.
[整理番号:0128]
厳寒期の北海道へ渡るルートは、しばらく未定だった。
上陸は苫小牧港と想定したものの、フェリーに拘束される時間の短い(従って、気象条件に左右される時間も短い)、 八戸からの乗船出航を漠と考えていた。
よしさんも東日本大震災の被災者のひとり(家屋一部損壊)で、3.11のその時、海上のフェリーは津波にどのように 対処したのかが、気になった。
その折、商船三井フェリー株式会社「さんふらわあ さっぽろ」加藤勝則船長が、国土交通省の 「津波に遭遇した船の行動事例集」に寄せた「大震災、港外退避とその後の緊急輸送等について」(※02)を読んだ。
この一文に感ずるところ大いにあり、海上で命を託すなら加藤勝則船長率いる「さんふらわあ さっぽろ」こそ最適と 判断し、往路・復路とも希望通り乗船させて頂き、大変感謝している。
金華山沖を航行する「さんふらわあ さっぽろ」船上で、東日本大震災の犠牲者・行方不明者・被災者を思い、手を合せ祈った。
fig.01 「さんふらわあ さっぽろ」デラックスルームから見る太平洋の日の出
fig.01 「さんふらわあ さっぽろ」デラックスルームから見る太平洋の日の出

2012年01月の北海道は、降雪による高速道路の区間閉鎖が続発する状況にあり、 低気圧接近・前線通過等の悪天候を考慮し、苫小牧⇔網走間の移動には決行日と予備日を 併せ、都合3日間の日程を予定した。
一日で長距離移動するための、事前氷雪路走行練習に予備日を使い(※03)、行動原則を決めた(table.01)。
翌朝、ホテルの無料パソコンで、高速道路及び天候情報を収集し、移動に問題のないことを確認し、決行日とした。

【単独車両の寒冷地行動原則】(table.01)
■移動時間は、09:00〜15:00とする
■オフロードに入らない
■途中早目の給油(宿到着時の満タン駐車)
■ホイルハウス内のツララは、蹴り落す
■尻から座り、車外で両靴を打ち合わせ、雪を落す
fig.02b 道東自動車道路・十勝平原SA

網走に向かって、苫小牧のウトナイ湖近くに位置する「沼ノ端西インター」から日高自動車道路に乗り、 「苫小牧東インター」で道央自動車道路に乗り変え、「千歳恵庭JCT」から道東自動車道路に進路を取った。
吹雪で天地・左右の見境がなく、どこをみても白一色にホワイトアウトした 夕張⇔むかわ穂別⇔占冠区間を凌ぎ、日高山脈の長いトンネルを抜けると、眼下の十勝平野は雪をかぶり、空は晴れていた。
十勝平野のただなかで、ひとり感謝する。
fig.02 道東自動車道路・十勝平原SAからの日高山脈

fig.02 道東自動車道路・十勝平原SAからの日高山脈

fig.03b 道の駅あしょろ銀河ホール21 第16回ワカサギに学ぶ会は、発祥の地・網走で開催される(※04〜※07)。

ワカサギ増殖に携わる者にとって、網走湖と網走湖のワカサギに纏わる人々には、格別の想いがある。
網走湖のワカサギ研究成果を掲載した学術文献中で、たびたび目にする諸先生方や、漁場で汗し、ワカサギ受精卵を各地に出荷くださる 西網走漁業協同組合の皆さん方に想いを馳せ、前年夏から準備にかかった。

網走湖を見るために、人々と出会うために、2012年01月下旬、ようやく足寄町まできた。

fig.03 道の駅あしょろ銀河ホール21
fig.03 道の駅あしょろ銀河ホール21
(写真をクリックして動画「大空と大地の中で 松山千春」YouTube Miho214 さん投稿 4'03" を見たい)

【注】※※※音がでます※※※ご注意ください※※※(ブラウザの戻る矢印で戻ります)※※※

fig.04b 網走湖への分水嶺・鹿の子峠 道東自動車道路は、現在のところ足寄町が終点で、その先、日本一寒い町・陸別町を経て網走までは一般道を行く。
街道レースを競いにきたわけではないから、4リッターガソリンエンジンの Jeep Grand Cherokee といえども、急ぐ地元車が接近すれば毎度道を譲る。
陸別町の外れ、津別町へ入るところが、鹿の子峠。
標高は300mと低いながら、十勝と網走の地方を分ける分水嶺である。

充分に除雪された鹿の子峠に立ち、津別町を見やれば、この傾斜が水を集め、やがて網走湖へ 注いでいることが、静かに伝わってくる。
マイカーで道内を縦横に走るのは初めてでも、水の流れに従い低きに走り、 美幌町・大空町を辿り、網走湖に到着する原理をガイドラインに置く、よしさんには、 流域面積の一端・鹿の子峠攻略は網走湖到着とイコールの意味を持つ重要ポイントに思え、感無量であった。
鹿の子峠からは、水の道を行けば良い。

fig.04 網走湖への分水嶺・鹿の子峠
fig.04 網走湖への分水嶺・鹿の子峠

【車両冬装備】(table.02)
冬タイヤグリップを高めるため低圧に
雪用ワイパー前後とも
牽引フックフロント&リアー(Uシャックル含む)
牽引ロープ9トン&12トン・革手袋他
鍵穴用ガムテープ凍結予防
冬用ウオッシャー液凍結温度−35℃&予備
冬用クーラント凍結温度−75℃&予備
予備燃料ガソリン携行缶20リットル
飲料食料手の届く範囲に置く
fig.05b 網走位置図

fig.05 結氷した網走川下流 fig.06 網走川河口
fig.05 結氷した網走川下流 fig.06 網走川河口

fig.07 烈風と流氷の能取岬

fig.07 烈風と流氷の能取岬

fig.07b 烈風と流氷の能取岬 オホーツク海に突き出し、流氷寄せる能取岬は、風もまた冷たく強かった。
第16回ワカサギに学ぶ会の前々日は、能取岬に近い高台に建つ民宿あら鷲(※09)で、知床半島の山々を眺め、 半島の先端にかすむ国後島方向をしげしげと凝視した。
もっと先、択捉島のある方向は空と雲と海が一体となり、判然としない。
夜は、オホーツク海の北西に右向きW型のカシオペア座、中に北極星、北東・水平線からヒシャクの柄を下にして 立ちあがる格好の北斗七星(おおぐま座)を、キリキリと一歩づつ雪音のする大地に立って、震えながら見上げた。
灯りのない尾根で、大パノラマ・満天の星と正対し、自然の大きさと人間の小さきを感じた。
fig.08 流氷と知床半島の山々(民宿あら鷲にて)

fig.08 流氷と知床半島の山々(民宿あら鷲にて)

網走市は、オホーツク海における漁業のみならず、能取湖・網走湖・藻琴湖・濤沸湖と4つの漁業対象湖を擁する 水産都市としても知られている。
全面結氷した能取湖畔に立つ、「川と湖の学習館・網走市立水産科学センター」内に出先拠点を置く、 北海道立総合研究機構水産研究本部さけます・内水面水産試験場道東内水面グループ に、第16回ワカサギに学ぶ会の現地世話人の皆さんを訪ね、海路・陸路を繋ぎ無事の到着を報告し、またお話を伺った。
「川と湖の学習館・網走市立水産科学センター」は、湖のでき方・漁業の概要等がわかりやすく展示・解説され、 飼育観察室では水槽の淡水魚・海水魚を見学し、ビジターの御当地把握・児童生徒教育用に意義ある施設と思えた(※10)。

fig.09 網走市立水産科学センター fig.10 結氷した能取湖
fig.09 網走市立水産科学センター fig.10 結氷した能取湖

世俗を離れた旅先で、3連泊もお世話になった網走セントラルホテル(※11)の、 レストラン“グラン グラシェ”の壁に、ジャン・コクトー(1889-1963,74歳)の2行詩を発見し嬉しくなった。

"耳"
私の耳は貝の殻
 海の響をなつかしむ

17〜18歳の頃に覚えたこの詩を、帰宅後に詩集で確認すると、訳者堀口大學は 「(略)この二行詩、実は"カンヌ"と題する六つの短詩から成る組詩の第五番目。 "耳"という題も訳者が勝手につけたもの。 カンヌは地中海紺碧海岸の贅沢な避寒地、富家の子コクトーは少年時、冬の間は家族と一緒に毎年この地で過ごす ならわしだった。(略)この二行詩、視覚による耳と貝殻との類似から発想、貝殻から海へつなぎ、 波音へと飛躍、音から耳へと自然に戻る仕組になっている。短い言葉がこだましあって、淡いノスタルジアを産んでいる。」と 解説に記している。
ひとつは原義でもあるコクトーのカンヌへの郷愁、ふたつは、よしさんのホームグランド千葉への想いが郷愁を誘ったものと納得した。
同時に(遠来であろう)ホテル宿泊客の望郷の念を見越し、"耳"を掲げた、 網走セントラルホテルとレストラン“グラン グラシェ”の、シエラトンホテル札幌にも並ぶ高等戦術の見事さに、脱帽した。
北方領土(択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島)返還要求署名簿は、さりげなくロビーに置かれ、よしさんも署名した(※12)。

分水嶺と流域、網走湖と下流、そして河口の網走漁港と道の駅・観光砕氷船発着場を巡り、 オホーツク海の流氷を眺める機会に恵まれたことに感謝しつつ、 8日間にわたる旅の前半を終え、プライベートの野暮用で古い友人に逢うため、網走から帯広・札幌・小樽・夕張・ 苫小牧へと車を向けた。

オマケに掲げる写真は、 空気中の水の微粒子が、ドアガラスに衝突し、ただちに凍結・結晶化したもので、民宿あら鷲(※09)では、 厳寒期(概ね02月まで)に発生する現象と、伺った。

fig.11 寒さの証明・水の結晶(民宿あら鷲にて)
fig.11 寒さの証明・水の結晶(民宿あら鷲にて)

【関連ページ&よしさん架蔵書】
(※01)堀口大學(1972):耳「解説U」,『コクトー詩集』カラー版世界の詩集14,初版,240pp,角川書店(東京),\680,函.

(※02)加藤勝則(201109):大震災、港外退避とその後の緊急輸送等について「津波に遭遇した船の行動事例集」,国土交通省近畿運輸局海上安全環境部海事振興部,
(※03)よしさん(2012):氷雪の支笏湖をJeep Grand Cherokeeでドライブ
(※04)よしさん(2012):第16回ワカサギに学ぶ会(北海道網走市)参加報告
(※05)よしさん(2012):網走湖のワカサギ氷下漁見学
(※06)よしさん(2012):網走湖の動物プランクトン
(※07)よしさん(2012):網走湖の植物プランクトン
(※08)一般社団法人網走市観光協会
(※09)民宿あら鷲
(※10)網走市立水産科学センター
(※11)網走セントラルホテル
(※12)独立行政法人北方領土問題対策協会

発表:2012年03月09日 よしさん
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