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| 0085 |
| 宇曽利山湖(うそりやまこ)lake usoriyama. |
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| 青森県下北郡大畑町(むつ市が管理) |
1地形図 | 恐山 |
分 類 | 火口原湖 |
別 称 | 恐山湖・宇曽利湖 |
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JR大湊線下北駅の北西約9km。 車は、国道279号線で下北半島を北上。 むつ市に入り、新田名部川を渡り、田名部信号(歩道橋あり)から (右前方・むつバイパスを行かず)旧道(直進・北上)を進む。 市街地を道なりに北上、2200m先で国道338号線を 横断し、県道4号線(むつ恐山公園大畑線)を走行。 西へ高度を上げて行く。 恐山への道路は、冬季(11月04日〜05月14日)閉鎖 されるので、注意が必要。 |
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| 2.66km2 |
| 水深15m |
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| 往古 |
生息確認年月 | 2001(平成13)年11月17日未確認 |
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貸しボートなし。 駐車場とトイレは、寺・レストハウス・冷水にある。 |
Special Feature | 付近一帯に、イオウ臭が漂い、 |
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多くの噴気口と、樹木のない異様な風景が展開する。 水質は強酸性、水色はコバルトブルーで、やや白濁。 魚類はこの水に適応できたウグイが、小河川の流入する南岸付近に、 生息している(広瀬ら:2003)が、宇曽利山湖に、釣り場としての価値はない。 カルデラ内(すり鉢のボトム)だから当然、携帯電話とPHSは圏外で、 外界との連絡はできない。 「オドロな気分で、思いきり沈みたい」そんな願いをお持ちなら、ここは絶好だ。 キーワードとして、死後の世界・霊感・悪霊・仏・北限・風・ さいはて・静寂・荒野・自然・等がすぐに思い浮かんでくる。 宇曽利山湖は、一人で訪ねるのに似合う。 できることなら、季節の終わり、晩秋に。 湖畔に立ち、己の過ごしてきた遥かな時を静かに振り返り、 噛み締めるのに、格好の場所だ。 |
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歌なら、中島みゆきの「白菊」を薦めたい。 ♪月の降る夜は 水面に白菊が咲く 涙溜まる掌 ひとつ白菊が咲く 冬を越えてあなたともう一度めぐり合い 冬を越えてあなたをもう一度愛したい 変わらずに変わらずに 幻よ冬を越えて 月の降る夜は 水面に白菊が咲く 涙溜まる掌 ひとつ白菊が咲く そして更に姉妹アルバムに収録されている「明日なき我等」を 聞くなら完璧だろう。 (pony canyon PCCA-01380 月−WINGS & PCCA-01378 日−WINGS) 宇曽利山湖から去る時、肩の荷を降ろしたような安堵と、 強くなった己を感じるだろう。 |
History | 名称は恐山(おそれざん)に由来。 |
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また、アイヌ語の湾、「ウスオルコタン」・「ウシュロ」の略・転訛とも。 恐山山地カルデラ内の火口原湖で、ほぼ円形。 周囲は、12.5km。湖面標高214mである。 インレット(流入部)は、大尽沢(おおつくしざわ)・小尽沢(こづくしざわ) 等、外輪山からの小河川7本のみ。 流出は、2級河川・正津川(流域面積52.2km2、流路延長18.0km) ただ1ケ所。 正津川は別称・三途の川と呼ばれ、宇曽利山湖の三途川橋から北東に流れ、 下北郡大畑町正津川地先で、津軽海峡に注ぐ。 宇曽利山湖は下北半島国定公園にあり、鳥獣保護区(環境庁)である。 周辺の恐山山地はヒバの美林でも知られる。 北隣の大畑川の赤滝上流には、ヤマメ(サクラマス)の一種、スギノコ(杉の子) が生息しており(水産資源保護法の保護水面に指定され、捕獲は禁止)、 仁部沢でスギノコを釣った話や、大畑川・川内川・男川・古佐井川・易国間川 等、下北半島の往年のアユ・ヤマメ・イワナ釣りは伊東阿佐男の『鮎の川』 に詳しい(昭和34〜36年発表稿)。 宇曽利山湖の北岸に、釜臥山菩提寺がある。 貞観2年(860年)立石寺(山形県山形市)を開いた、天台宗比叡山第三代 座主・慈覚大師円仁(794〜864年)が、貞観4年(862年)に地蔵堂 (本尊・延命地蔵菩薩)を建立したのが、恐山の起源とされる (別説では、貞観2年に始まるとされる=古寺名刹辞典)。 恐山は、比叡山・高野山と並ぶ日本三大霊山といわれ(他説は、富山県立山・ 山形県立石寺)、宿泊と入浴(温泉=緑バン泉=70〜93℃)ができる。 蓮華八葉とも呼ばれる外輪山・賽の河原・極楽浜・三途の川や、人気のない 荒涼とした風景・点在する石地蔵・八大地獄などが見事に調和し、仏教の 霊山という雰囲気を醸している。 今は禅の一派、曹洞宗吉祥山円通寺の管理下にあり、毎年7月20〜24日に 恐山大祭、10月09〜11日に恐山秋詣りが開かれる。 ここは東経141°41’、北緯41°18’の地だ。 |
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宇曽利山湖の湖沼学的特徴は、古く、湖沼学者吉村信吉が『湖・沼』 (166pp)で一般読者向けに発表している。 曰く「腐植質以下の諸物質は、特殊な湖に於ては相当に量が多く、生産に著し い影響を与える。その結果、一般に生産が阻害される。更に著しい特徴は、 全体の量よりも出現する生物の種属数が著しく少いのにも関はらず、時として 特殊な生物が甚しく繁殖する場合があることである。 例へば、強酸性の水を湛へる恐山湖は、湖底に平常の湖には稀な蘚類 リンコステギウムが夥しく繁殖し、動物性プランクトンとしてはシモケファルス といふ甲殻類と、耐酸性の輪虫ブラキオヌス・ウルケオラリスが夥しく、 魚類としてはただ一種ウグヒが沢山ゐるなどはこの適例である。」 吉村信吉はまた、湖沼を利用する場合に必要な湖沼学的研究・応用湖沼学の 必要性を述べ、恐山湖の事例を挙げている。 「鱒は酸性の強い湖には不向であるが、酸性湖は滅多にないから、特に調査 しなければならないことは稀である。しかしこんな簡単なことが分らなかった ために、強酸性の恐山湖にヒメマスを移植するやうな無駄な試みもされた。 」(151pp)。 吉村信吉は研究者用に、1937年初版の名著『湖沼学』を著述しており、 学名 Simocephalus vetulus は和名でオカメミジンコを、 Brachionus urceolaris は和名でカメガタツボワムシを指すものであり、 カメガタツボワムシの基本型であるか変種かは不詳ながら、 プランクトン専門書のカメガタツボワムシ記述部は、生息水域の指標に 「酸性水域にも生息する」と加える必要があろう。 カメガタツボワムシは、千葉県丑ケ池にも生息している。
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(架蔵書)】 | Reference Books. | |
○湖沼学 吉村信吉 | 1976(昭和51)年09月30日,増補版, | |
生産技術センター | ||
○湖・沼 吉村信吉 | 1941(昭和16)年12月01日 | |
誠文堂新光社 | ||
○古寺名刹辞典 金岡秀友 | 1975(昭和50)年06月10日 9版 | |
東京堂出版 | ||
○鮎の川 伊東阿佐男 | 1979(昭和54)年11月03日 | |
大陸書房 | ||
○青森県統計年鑑(平成13) | 2001(平成13)年03月 | |
青森県企画部統計課編・発行 | ||
○青森県河川海岸図 | 2001(平成13)年03月 | |
青森県県土整備部河川砂防課編・発行 | ||
○広瀬茂久・金子豊二(2003) | 「恐山ウグイの酸性適応機構」 | |
東京工業大学 大学院生命理工学研究科 広瀬研究室 |