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釣魚本大繕『Bass and Bass Fishing』の製本修理
The bookbinding repair of "Bass and Bass Fishing".
釣魚本大繕『Bass and Bass Fishing』の製本修理
The bookbinding repair of "Bass and Bass Fishing".
[整理番号:0124]
『Bass and Bass Fishing』は、アメリカ合衆国の中東部オハイオ州 シンシナティ在住のオザーク・リップレーが、1924(大正13)年に著した、モノクロ写真入り実用書である。
『Bass and Bass Fishing』は、30年以上にわたり、水辺で BASSと釣りから学んだことの集大成であると、著者は序文に述べている。
してみると、少なくともオザーク・リップレーは1894(明治27)年 以前から、釣りを楽しんでいたものと思われ、(後述する) 『ザ・ブック・オブ・ザ・ブラック・バス』の第1世代の読者であった可能性が高い。
折り丁の背が綴じ糸と共に見える状態
fig.01 折り丁の背が綴じ糸と共に見える状態

日本の世相は、1894(明治27)年に日清戦争がはじまり、 本所〜船橋〜千葉〜佐倉間に総武鉄道(のちに国鉄総武線・現JR)が開業し、 1896(明治29)年、樋口一葉(現5千円札肖像)が25才で没した時代である。
また、日本の釣魚関係文献は、 『釣魚獨案内』高橋清三1919(大正08)年・ 『釣の研究』上田 尚1921(大正10)年・ 『釣魚十二ケ月』高橋鬼川1925(大正14)年・ 『釣竿かついで』上田 尚1925(大正14)年、等が出版された頃に対応する。

同上、清掃後
fig.02 同上、清掃後

さて、本書『Bass and Bass Fishing』を点検すると、函・紙カバーのない文字通りの 裸本(或は出版当時に附属していて、その後紛失したものか)で、外観と中身の本文ページは経年を考慮すれば並み程度の状態だ。
ただ残念なことに、 見返し(表)のノドが割れ、下貼りのガーゼも切れ、5つの折り丁の背が綴じ糸と共に見える状態になっている、が、 仔細に観察しても、折り丁が少数のためか背丁や背標は見当たらない。
背糊は虫に喰われ、糊はなく、虫の糞だらけになっているが、小型で少ページ数のカードカバー本(Card covers)の壊れ方としては、 比較的に製本修理のしやすい、まっとうな壊れ方と言える。

そこで先ず中身から手を付け、折り丁の背の虫の糞をヤワヤワと清掃する。
裏の見返しのノドは辛うじて繋がっているが、製本修理のため切り離し、角山みぞつきの表紙と中身の2大パーツに分解する。
改めて中身の背に糊を入れ、新規に用意したガーゼと背ばり紙を接着し乾燥させる。
元の見返し(表裏)に中身から続くガーゼを接着し、新たにハーフサイズの見返しを表と裏に貼付して完成。

製本修理開始 完成状態 『Bass and Bass Fishing』と『ブラックバッス』
fig.03 製本修理開始(左)と fig.04 完成状態(中) fig.05 『Bass and Bass Fishing』と『ブラックバッス』

『ブラックバッス』赤星鉄馬・福原 毅共著1996(平成08)年によれば、 ブラックバスは、1881(明治14)年に出版されたドクトル・ヘンシャルの 『ザ・ブック・オブ・ザ・ブラック・バス』により世に知られたが、 1903(明治36)年カナダのヒューロン湖畔で約2ケ月のキャンプをして ブラックバスを釣った赤星鉄馬が、当時は『ザ・ブック・オブ・ザ・ブラック・バス』 の存在を知らなかったことが、記述されている。
赤星鉄馬がアメリカからブラックバスを移入したのは、ご承知のように1925(大正14)年のことである。

ここまで読み進めてくれた、ブラックバス釣りファンのために、 『Bass and Bass Fishing』の目次と釣り具の写真を出血大サービスで紹介しよう。
2010年比86年前の書物から何を得るかは、読み手次第というところ。

『Bass and Bass Fishing』 目次の一部
fig.06 『Bass and Bass Fishing』と、fig.07 目次の一部

これが、ヘドンの
2ピースベイトキャスティングロッド
fig.08 再び姿をあらわした86年前の逸物、これが、ヘドンの2ピースベイトキャスティングロッドだ

ヘドンの
ベイトキャスティングリール(ワォー!!) タルボットのベイトキャスティングリール サウスベンドの
ベイトキャスティングリール
(アンチバックラッシュ)
fig.09 ヘドンのベイトキャスティングリール(ワォー!!)
fig.10 タルボットのベイトキャスティングリール
fig.11 サウスベンドのベイトキャスティングリール(アンチバックラッシュ) 四角枠でラインにテンションを与えている

オールドルアー1
fig.12 フックに対するリーチの取り付け方等々、ジッとご覧あれ

オールドルアー2
fig.13 背景のオールドルアー3も、お楽しみください
コレクターの皆さんには、ヨダレが出そう(でしょ)

オザーク・リップレーは、『Bass and Bass Fishing』の初版出版後、11年を経た1935(昭和10)年04月には、 『Sports Afield』の編集スタッフとしても活躍している。
『Sports Afield』は、1887(明治20)年アメリカ合衆国で最初に創刊されたアウトドアー月刊誌で、別途紹介の場を作りたい。
蛇足ながら、『ブラックバッス』の第8章・参考文献(167pp)の15番に挙げられた『Bass and Bass Fishing』の著者名は、 Ozark Riphey とあるが、 Ozark Ripley の誤植である。
諸兄は、急ぎ書架から『ブラックバッス』を取出し、点検されたし。

【謝辞】
(special thanks Mr S.watanabe and hi's Grandfather, yoshisan.)

【参考文献(よしさん架蔵書)】
『BASS, PIKE, PERCH AND OTHER GAME FISHES OF AMERICA』
James A Henshall,M.D. NEW EDITION 1919年 410pp Stewart & Kidd company. cincinnati, us
『Bass and Bass Fishing』Ozark Ripley 1924年 148pp Sportsman's Digest Publishing co. cincinnati, us
『Sports Afield』Vol.93 No.4 April, 1935 66pp Sports Afield Publishing co. Long Prairie, Minnesota, us
『ブラックバッス』赤星鉄馬・福原 毅 1996(平成08)年06月22日 189pp イーハトーヴ出版 1800円
『図書館の製本』  古野健雄 1972(昭和47)年02月15日第1刷 239pp 日本図書館協会 600円
『製本ダイジェスト』牧 経雄 1972(昭和47)年09月01日第5刷 140+5pp 印刷学会出版部 250円

【注】
『Bass and Bass Fishing』Ozark Ripley 1924年からの、写真複製・有線送信・本HP掲載公表は、 「ベルヌ条約」及び「万国著作権条約」並びに国内法「著作権法」を踏まえ、初公刊後86年を経ている等合法行為です

発表:2010年01月01日 よしさん
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