ODL・トーク Outdoor Life Talk
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辞世の解読
The decoding of the death poem.
辞世の解読
The decoding of the death poem.
[整理番号:0121]
ご縁があり、義母の生家の菩提寺に墓参した。
近年の墓石3基は黒御影石で、問題なし。
古い4基は砂岩のようで、白・灰・小豆3色に苔生し、彫りが浅くなり、更に一部は欠落し紛失していた。
文字(らしきもの)を肉眼で凝視し、視線を外しまた一瞥し、写真を撮影し、指で触って彫りを確認しても、判読は至難を極めた。

帰宅後、不満足なノートの内容を睨みながら、義母の父の父の父の父の辞世の解読に掛かる。
和歌の類と察しが付き、漢字は(読めぬが)漢字と推定できるものの、かな(のように見える箇所)は本当にかなか、はたまた漢字か疑わしい。

「や」は「也」、「を」は「世」。
前後が読めれば中の文字が確定できるクロスワードの如き、草書・くずし字・異体字の世界に闖入して、早3ケ月。
線香1本の義理刹那より、連日唸る辞世の解読が供養になろう。
30年前から書架に収まる、92年前の草書辞典も日の目を見て、辞世の解読は続く(※01)。
義母の父の父の父の父の辞世
fig.01 義母の父の父の父の父の辞世


不思議なもので、読もうとして読めずにいた文字も、ある朝、目覚め眺めれば、さらさら読めた。
白妙菊也 浮世の時を 傳ずして   煩う事なく 歩まゆく 死出の夏祝

年中、常緑ならぬ銀白色の葉を愛でる、地中海地方原産の観葉植物白妙菊は、四季を告げる特別な季節感を持たぬ 多年草だが、唯一、5〜6月の頃、黄色の花が咲く。
(自身は)白妙菊の花に送られ逝くが(子孫は)無事に日々を渡り行け、と味わえる。
消費者として自家鑑賞用に白妙菊の一鉢を手元に置いたと考えられる一方、 正月用縁起物の松や千両、メロン栽培が盛んな海岸地方のこととて、家業に出荷用白妙菊の栽培が なされていても(代々栽培農家であるから)違和感はない。

ところが、白妙菊の日本への渡来は明治時代とする、ホームページ・ブログが、インターネット上に溢れている。
調査と事実確認がなされず、従って出典の添えられぬまま断言する「風評」の氾濫には、辟易する。
「義母の父の父の父の父の辞世」を正とするなら、「明治の末」説なぞ笑止。
義母は大正生れで「明治10年に渡来」説も大変に疑わしい、という新たな疑問が発生したが、渡来年代の追求については 本稿趣旨と相違するため、今後の宿題としよう。

近世の文字が綴られた、古文書・和歌・短歌・俳句・版画(浮世絵・鯰絵)・石碑文・寺社篇額・短冊・屏風等につき、原本・写本・拓本・写真等今に伝わるさまざまな様態下で 文章を解読するには、尚一層の勉強が必要と御先祖様に教えられた。
これを機に、励みたい。合掌。

【参考文献】
(※01)「亀山湖よしさん」http://blog.lake-champ.com/
(※02)帝国書道研究会(1976):『草書新字典』(復刻版).文献出版.東京, 原本は1917(大正06)年.集文館版
(※03)児玉幸多(1979):『くずし字解読辞典』(普及版).近藤出版社.東京,
(※04)林 英夫・若尾俊平(1991):『増訂近世古文書解読くずし字解読字典』(第28刷).柏書房.東京,
(※05)柏書房(2005):『古文書くずし字200選』(第5刷).柏書房.東京,
(※06)柏書房(2003):『古文書くずし字500選』(第2刷).柏書房.東京,

発表:2009年08月30日 牛久沼漁業協同組合顧問よしさん
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