[整理番号:0117]
平成19年度茨城県内水面漁業協同組合役職員会議は、
2008年02月19日(火)〜20日(水)、茨城県・大洗において開催された。
茨城県内13の内水面漁業協同組合と、講演者・茨城県漁政課・同水産振興課・同漁場管理委員会・
同内水面水産試験場並びに、主催の茨城県内水面漁業協同組合連合会と
総勢54名が、会場となったオーシャンビュー大洗に集った。
牛久沼漁業協同組合からは組合長以下よしさんも含め10名が出席した。
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講演(1)『カワウってどんな鳥〜効果的な防除に向けて〜』長岡技術科学大学工学部山本麻希助教授
潜水性鳥類の研究で第1人者である山本先生は、
カワウの潜水速度が、平均1.6m/秒から最大4.7m/秒で、淡水魚より速いという
絶望的データをはじめ、カワウの生態・分布・カワウ管理の難点等を紹介された。
香港やイスラエルにおける防除成功例や、日本における防除事例報告がなされたが、
カワウの防除対策は未完成で、決定打のない現状を知った。
1日約500gの餌(魚)が必要とされるカワウは、牛久沼へ少ない時で20〜30羽、
多い日は300羽も飛来する。
1日の採餌量すべてが牛久沼で賄われ、かつ、魚種をワカサギ(約5g)と想定するなら、
1羽で100匹、20羽で2000匹、300羽で30000匹(150kg)が喰われ、
1週間も2週間も居座られたら、膨大な漁業資源が消滅する。
漁場の形状・水深を踏まえ、音・光・案山子・重要魚種の隠れ場所を増やす・駆除したい魚を食べ易い水域に囲う等、できることを実施したい。
fig.01 長岡技術科学大学工学部山本麻希助教授の『カワウってどんな鳥』
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講演(2)『川魚の冬の生活』水圏生態研究室大方昭弘先生
元東北大学教授の大方先生は、
茨城県北部を流れる久慈川(富岡橋周辺)における、冬季のオイカワ・カワムツの観察事例を紹介された。
稚魚の多くは流れの停滞した、デトリタス(Detritus 有機懸濁物質・仔稚魚の餌料)の堆積や、
水生植物のある浅場(川のワンド)に集中しており、流芯の直線部では
見かけないこと等から、瀬と淵のある河川の屈曲や水生植物に覆われた岸辺の重要性を説かれた。
水の輸送効率を追求した、三面コンクリート張りの直線水路・改修河川は水生生物の住みにくい
環境であることを再認識させられた。
fig.02 水圏生態研究室大方昭弘先生の『川魚の冬の生活』
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講演(3)『アユはこうして海に行く〜流下仔魚の話』茨城県内水面水産試験場河川部荒山和則技師
アユ稚魚購入・放流を間近に控えた時節柄、前回講演(2007年02月)の「沿岸海面におけるアユ仔魚」
に続いて、今回は久慈川におけるアユ仔魚の流下状況調査結果を紹介された。
アユ仔魚は流芯を流下すること、昼夜で流下する水深が選択的に相違すること等、興味深い話を伺った。
久慈川における調査結果を、霞ケ浦導水事業に挙げられた那珂川を下るアユ仔魚の生態調査と研究に、
ぜひ水平展開して頂きたいものだ。
fig.03 茨城県内水面水産試験場河川部荒山和則技師の『アユはこうして海に行く』
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続いて、指導事項が3項あった。
指導事項(1)「水産業協同組合法の改正に伴う組合員資格審査の厳格化について」茨城県漁政課
指導事項(2)「漁業権魚種と遊漁料の徴収について」茨城県漁政課
指導事項(3)「委員会指示について」茨城県内水面漁場管理委員会
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さらに、報告及び協議事項では、
報告及び協議事項(1)「茨城県における内水面漁業の現状・課題・対策」茨城県内水面漁業協同組合連合会
1975(昭和50)〜2005(平成17)にわたる30年間の「内水面漁業の魚種別生産量の推移」グラフが紹介され、
1975年の全生産量約18000トンが、2005年に約3000トンへと、1975年当時の16%へ落込んでいる
現状に少なからずショックを受けた。
ポイント・オブ・ノーリターン、引き返せない、再興できない一線を越えたのではないか。
グラフの下降線を延長し、10年後を想定すれば「茨城県における内水面漁業」は絶滅に追い込まれると見られ、
現在は絶滅危惧業種の筆頭格に位置するのではなかろうか。
水辺の環境を守り、水産資源増殖に励む、
釣り人(遊漁者)・漁業者・行政・立法府それぞれの立場において、無策で良いはずはない。
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報告及び協議事項(2)「漁協からの要望事項について」
アユの新しい感染症(エドワジエラ・イクタルリ)について、茨城県に早急な対応を希望したい(久慈川漁協)。
組合員資格審査委員会設置の話や、懇親会における出席者との情報交換等、よしさんには大変有意義な2日間であった。
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