[整理番号:0116]
顕微鏡デジタル写真の倍率
「この(顕微鏡デジタル)写真の倍率は、何倍ですか」という質問を良く受ける。
曖昧で主旨と定義の不確かな質問だと思いつつ(そんなことは顔にださず)
その都度、ああだから、こうであると説明し回答するのだが、別人からの
同様質問にも再度答えるハメになり、エンドレスなのだ。
釣り場環境に大きな関心を持ち、肉眼だけの観察に飽き足らず、水中のプランクトン調査に
顕微鏡デジタル写真の活用を検討している後進のために、「顕微鏡デジタル写真の倍率」
につき、まとめておきたい。
先ず、倍率というのは拡大率であること。
1mmの実物が、ある条件下(ラインナップ=道具)で、10mmに見えたなら、
その倍率は10倍(10÷1=10)という、至極当然の話だ。
10μmの実物が、ある条件下(ラインナップ=道具)で、10mmに見えるなら、
その倍率を1000倍(10000÷10=1000)という。
同様に、100μmの実物が、ある条件下(ラインナップ=道具)で、10mmに見えるなら、
その倍率は100倍(10000÷100=100)という。
実に単純・明快である。
そこで「ある条件下(ラインナップ=道具)」の部分を具体的に、よしさんの場合で説明しよう。
よしさんの使用システムは、生物顕微鏡のプレパラート上の実物(プランクトン)を、
対物レンズを通過させ、デジタルカメラをセットし(3鏡筒式で接眼レンズを通さず直接)撮影して得た原版を、
21インチのディスプレーに表示(100%)させるものである。
このシステム中、可変・可動部は2つあって、ひとつは対物レンズの交換であり、
ふたつはデジタルカメラのズーム機能である(顕微鏡の焦点調節用粗動ハンドルと
微動ハンドルの要素は、ここでは除外する)。
そこで、常用する2種の対物レンズを、デジタルカメラのズーム機能の最小・最大の2通りで使用すると仮定すれば、
100μmの実物を観察する場面の
「ある条件下(ラインナップ=道具)」は、表01(table.01)に掲げる4通りの組合せで示せる。
Case
name |
ラインナップ諸条件 |
ディスプレー上で実測 |
倍率計算結果 |
作例(原版) |
4小 |
顕微鏡対物レンズ×4 |
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![fig.01 200倍](odl0116-1.jpg)
fig.01 200倍
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デジタルカメラズーム最小 |
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20000÷100=200 |
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(1280×960ピクセル撮影) |
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200倍 |
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ディスプレー21インチ100%表示 |
20mm |
ケラレあり |
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4大 |
顕微鏡対物レンズ×4 |
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![fig.02 550倍](odl0116-2.jpg)
fig.02 550倍
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デジタルカメラズーム最大 |
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55000÷100=550 |
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(1280×960ピクセル撮影) |
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550倍 |
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ディスプレー21インチ100%表示 |
55mm |
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10小 |
顕微鏡対物レンズ×10 |
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![fig.03 240倍](odl0116-3.jpg)
fig.03 240倍
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デジタルカメラズーム最小 |
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24000÷100=240 |
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(1280×960ピクセル撮影) |
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240倍 |
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ディスプレー21インチ100%表示 |
24mm |
ケラレあり |
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10大 |
顕微鏡対物レンズ×10 |
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![fig.04 1480倍](odl0116-4.jpg)
fig.04 1480倍
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デジタルカメラズーム最大 |
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148000÷100=1480 |
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(1280×960ピクセル撮影) |
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1480倍 |
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ディスプレー21インチ100%表示 |
148mm |
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表01(table.01):4通りの組合せ
※上記の作例原版01(fig.01)〜04(fig.04)は、表組に収まるよう約10%(128×96ピクセル)に縮小している
顕微鏡デジタル写真の主たる使用目的が、魚類の餌料としての動物プランクトン調査の場合(低レベル、または実用レベル使用
という範疇)、それぞれの倍率の、使い勝手は以下のようである。
通常、表01(table.01)の「4大」、つまり(21インチのディスプレー上で)550倍というあたりで大概仕事はこなせる。
大概というのは、目的のレベルにも関係し、トコトン追求しプランクトンの学名(種)まで同定できなくても、属が特定できれば
(それも困難な場合、科でも)良しとする、目標設定だからである。
これより小型の植物プランクトン、例えば藍藻類のアナベナやミクロキスティス群体の観察をしたい場合や、
原生動物類(おおむね小型)を観察するには、
表01(table.01)の「10大」、つまり(21インチのディスプレー上で)1480倍というあたりが活躍する。
上述した、よしさんの使用システムの守備範囲をプランクトンの大きさで表わせば、
表01(table.01)の写真原版01(fig.01)〜04(fig.04)に見えるグリッド(格子)間の間隔が、100μm
であるから、おおよそ1000μm(1mm)〜200μm程度を観察するのに適当で、なかでも500μm〜100μm程度の観察に最適といえる。
これに該当するプランクトンの属を挙げれば、
オナガミジンコ・ミジンコ・タマミジンコ・ゾウミジンコ・カイミジンコ・ケンミジンコ・ヒゲナガミジンコ・
ツボワムシ・ツノワムシ・カメノコウワムシ・トゲナガワムシ・フクロワムシ・フクロワムシモドキ・ネズミワムシ・
ハネウデワムシ・ミツウデワムシ・テマリワムシ・ツボカムリ・コドネラ・ツノオビムシ・ミドリムシ・ファークス・
ボルボックス、等である。
どのようなラインナップ(道具)で、どのような大きさの対象物(プランクトン)を観察でき、それが
どのような倍率にあたるかの実践的説明は、これで終わり。
もっと重要なことは、倍率だけ単独で検討しても、あまり意味がないことを知ることにある。
いくつかの方法論を組合せ、無限に拡大してゆくと、倍率もまた無限に大きくなるが、
それがバカ倍といわれる由縁は、オリジナルの情報が増えない単なる拡大だからである。
倍率(拡大率)と、解像度(質)は、違うことを知ることが大切だが、解像度の話をここで論じると、長くなり、
複雑なので本稿では見送る。
推奨の方法は、倍率(拡大率)だけにこだわらず、写真を見せる・見るという使用目的に合った、
解像度(質)を同時検討することである。
釣り場環境に潜在的関心を持つだけでなく、地上と水面を肉眼で凝視観察するだけでもなく、一歩も二歩も進めて、
自分自身が釣り場のプランクトン調査を実施し結果を発表(情報公開)できる、本当のパワーのある釣り人の出現を期待したい。
※ 千葉県亀山湖・茨城県牛久沼のプランクトン調査結果は「亀山湖牛久沼ワカサギ情報」を参照ください
牛久沼漁業協同組合顧問よしさん