第4回〜第6回釣り問題研究会参加報告
第4回釣り問題研究会は、2005年10月22日(土)東京海洋大学にて「海面における釣り問題の諸相」として、
東京湾にまつわる2題の報告と、討議がなされた。
1「船釣りの現在・過去・未来」
藤井克彦(釣りジャーナリスト)
2「東京湾からみる陸釣りの現在・過去・未来」
本間俊輔・吉野暢之(東京海洋大学大学院沿岸域利用論研究室)
☆
藤井さんは、釣り用語に残る古語の例を紹介され、文化として伝承されることも大切である、と説かれた。
アタリは「中り」のこと、「口」の中に「|」棒などの異物が入った状態を示す漢字で、「食中り」と同様の字義。
魚の口に鉤が入ることが「中り」であること等である。
また、江戸前の船釣りが貸し舟業から船宿へ移行してきたこと、小型和船時代のメリット・デメリット、
大型FRP船時代のメリット・デメリットを整理され、
続いて遊漁船の現状と問題点、船釣り人口増加の再生私案が発表された。
☆
再生私案では、「何よりも釣り客にいかに楽しんでもらうか、ということへの船宿経営者の努力がカギ」、
「経営努力不足が目に付く」と看破され、江戸前の船釣りという単語を内水面のレンタルボートに置換えても、
正鵠を射ているようだと、よしさんも感じた。
☆
本間さんと吉野さんは、釣り雑誌「つり人」の1946年創刊号〜2005年11月号を分析し、
東京湾における陸釣りの掲載記事に現れた魚種・釣り場数・記事数の解析を紹介された。
さらに、東京湾の水際線総延長882.1kmへのパブリックアクセスの可否と市区別現況内訳を報告された。
☆
過去も現在も東京湾の陸釣りの代表魚種は、ハゼ・クロダイ・スズキであることが
両氏の労作から分かった。
釣り場については、水際線総延長の73.7%がアクセス不可能と判明し、主として「場所がない」ことが
問題であると裏付られた。
この実態を踏まえ、多様な釣りを楽しめる「場の確保」を行政に働きかけることも必要ではないか、と発表者から
提案があった。
京葉地区の水際線の大方が企業敷地であり、企業敷地内は行政のコントロール下にない現状において、
行政への提案(入浜権の主張)ができますかとの、よしさんの質問には残念ながら即答はなかった。
☆
一方で、「場の確保」については、
SOLAS条約(海上人命安全条約)施行を受け、従来の黙認エリアが立入禁止エリアに変化しつつあることへの憂慮が釣り人の底流にあった。
社団法人全日本釣り団体協議会は、2005年10月09日の理事会で、SOLAS条約に伴う港湾の立ち入り制限について、
1 外国との条約締結により国が定めた法律だから、釣り人もこれに協力する。
2 港湾管理側と相互理解と信頼関係を深め、制限区域の見直しなど柔軟な対応を求めて行く
等を決定し活動されていた。
第4回釣り問題研究会以降の2005年12月22日、国土交通省港湾局が各地方整備局にあてた事務連絡の中で、
港湾の保安の確保と市民に親しまれるウォーターフロントの形成の両立に向けての具体的な指示を行った。
さらに、2006年02月22日、国土交通省港湾局と社団法人全日本釣り団体協議会の意見交換会がもたれた
(詳細は全日本釣り団体協議会HP
http://www.zenturi-jofi.or.jp/content/index2.htm
をご覧ください・別窓が開きます)。
関係者の尽力による、こうした一連の流れは、「場の確保」について明るい未来を展望させるものと、よしさんは歓迎し高く評価する。
第5回釣り問題研究会は、2005年11月26日(土)東京海洋大学にて「海面利用における考察」2題が報告され、討議された。
1「釣りが好きなら大丈夫・外房の漁港から釣りの今と将来を考える」
水口憲哉(東京海洋大学名誉教授)
2「プレジャーボートによるトローリングの現状と展望」
若林 務(NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会事務局長)
☆
水口先生は、「スポーツアングラー」誌の連載を教材に、
網中心に安定的な漁を展開する夷隅東部漁協と、地理的に隣接してはいるが、対照的に釣り中心にハンティング的な漁を主とする御宿岩和田漁協
との漁業権・漁獲(魚種・金額)の比較を紹介された(両漁協共通魚種の上位はイセエビで、漁獲量日本一は三重県ではなく、千葉県である)。
☆
両漁協とも小額ながら遊漁船からの手数料収入を得ており、この事例では遊漁と漁業は共存している。
ネコパブリッシング「スポーツアングラー」http://www.neko.co.jp/index.php(別窓が開きます)
☆
若林さんの報告で、衝撃的インパクトを受けたのは、日本では海面でのトローリング(遊漁)は禁止されており、
2000年〜2004年に一部地域で例外的に認められるようになった・・というあたり。
よしさんも知らなかったから「日本人の釣り人のほとんどがトローリング禁止だとは知らなかった」という若林さんの
指摘もうなずける。
大方の河川の河口域に、違法係留されたプレジャーボートがひしめきあっているのに、実は海面でトローリングはご法度だった、
こんなに漫画的でおもしろい実話があった。
☆
カジキのタグ打ちリリースに関して、日本・韓国・台湾のマグロ商業船が釣獲(混獲)したら、タグ情報はどこに伝えられ、有効利用記録化されますか
という、よしさんの質問に、「各種ルートから遠洋水産研究所へデータが集まる(と思う)」との回答と、「カジキ漁者・カツオ船での混獲
もあり、データは全て回収される訳ではない」という見方が示された。
また、JGFAを港湾部のマリーナに移転開設したり、JGFAがボートを所有しレンタルや乗合運用するビジョンについて、よしさんの質問には、
「方向として選択肢のひとつ」との回答であった。
プレジャーボートのオーナー300人、クルー5人としても1500人規模に終始する内輪の活動に留まらず、
法改正・トローリング開放に向けて、組織化の推進、関係先との相互理解・歩み寄り、社会への貢献、それらの積極的な広報が必要
ではないかと思った。
JGFA http://www.jgfa.or.jp/(別窓が開きます)
☆
第6回釣り問題研究会は、2006年01月28日(土)東京海洋大学にて「ワカサギ釣りの未来」3題が報告され、討議された。
1「ワカサギ釣りの存立構造」工藤貴史(東京海洋大学)
2「諏訪湖におけるワカサギ釣りと放流事業」真嶋茂(長野県釣り団体協議会)
3「芦ノ湖におけるワカサギ釣りと放流事業」橘川宗彦(芦之湖漁業協同組合事務局長)
☆
時節に即した「ワカサギ釣りの未来」という統一テーマの下、
工藤先生のワカサギにまつわる全般の最新報告と分析「ワカサギ釣りの存立構造」は、
グローバルな視点の中で現在位置を明確にした、初心者にも理解しやすいものであった。
☆
コスト&パフォーマンスの具体的算式例も示され、事業者は考え方を学ぶことができたようだ。
☆
橘川さんの「芦ノ湖におけるワカサギ釣りと放流事業」は、
増殖の現場で永年にわたり先端技術研究を実践されている当事者の、迫力ある発表であった。
☆
積上げられた知見もさることながら、惜しみなく紹介くださる姿勢こそ、
自家種苗生産の将来を模索する者にとって、大変ありがたく、良質なガイドラインとなる有意義な時間を頂戴できたことを感謝したい。
芦之湖漁業協同組合 http://www.ashinoko.or.jp/(別窓が開きます)
☆
長野県釣り団体協議会の真嶋さんが発表された「諏訪湖におけるワカサギ釣りと放流事業」は、
近年のワカサギ採卵量減少〜禁漁という処置が、50年前に作られた現在の内水面水産行政のひずみのひとつではなかろうか、
との問題提起で、漁業と遊漁の法的線引きの見直し時期にきている感がした。
☆
第6回釣り問題研究会をローカル的に見れば、
亀山湖のトキタボート(亀山湖釣舟協会会長)、おりきさわボート、のむらボートハウス、レンタルボートよりとも、
笹川湖からレンタルボートすずき(片倉ダム観光事業協同組合組合長)、レンタルボート笹川等、
亀山湖・笹川湖で釣り人を迎える側の2代目経営陣を中心に、ワカサギの放流事業を重視し、
積極的に勉強しようと参加したことは評価でき、心強く、また嬉しくも思った。
|