[整理番号:0007]
二人で釣りに行った。
8月15日〜16日と言えば夏の盛り、旧盆である。
目的地は人が少なくて鳥の声が聞こえる秘密の場所へという相棒のリクエストに
応じて、台風一過の昼にスタ−トした。
夏休み期間と重なって、どの水場も混雑が予想された。
三つ年下の相棒にルア−フィッシングを教えたのは私で、以来相棒も調子が良い
ときには“師匠”などと呼んでくる。
車で移動する陸っぱりの、ラン・アンド・ガンの最初は洞庭湖。
3mの減水で水色は、マッディ−。
岸の桜の根元からすり鉢状に落ち込んで、水面は遠い。
蔆がわずかに残るエリアを、“一番弟子”はスピナ−ベイトで狙っている。
水深は2m程。
アタリもなく、車で2〜3分離れた大欠の堰に移動。
ここも3mの減水で水色は、マッディ−。
さすがにピ−カンの日中でルア−に反応はない。
布施の名熊ダムに向かう。
のどかな田園と農家のたたずまいに、心も休まり「ここは故郷の風景に似ているナア」
と一番弟子は嘆息している。名熊ダムも2m程減水しているが、水面はクリア−だ。
グラブで30cmのブラックバスを釣り、リリ−スしていると奥から相棒が戻ってきて、
ワ−ムで27cmがでただけと言う。
ヒグラシの合唱の中、たまにカワセミが水に飛び込む音がする。
夕闇の中をまた移動。
今夜は荒木根ダムの堰堤で、久しぶりの車中泊だ。
テ−ブルを広げて湯を沸かし、ボイルドソ−セ−ジとインスタントラ−メンを作る。
満点の星空。南の稜線の上にサソリ座、赤いのがアンタレスだとすぐに解る。
北西に北斗七星、それをたどって北極星。さらに右にカシオペア。
地上には夕涼みに良い微風。
ころは良し。用意しておいたスイッシャ−を湖面にキャスト。
ジャ−、というプロペラの音が響く。相棒はバズベイトを引いている。
しばしのナイトフィッシングはビ−ルの酔いも手伝って、長くは続かない。
星がゆれているのは、上空に強風があるためか。
ワゴン車の窓とスライドドア−を全開にすれば、気持ちの良い夜風が
フルフラットシ−トを抜けて行く。
標高の低い房総の山でも、ちょうど良い風があるので寝苦しくはない。
蚊も飛べず、今夜は極楽。
朝は4時から左のインレットを攻める。
小道を下ると、リバ−チャンネル・馬の背・スタンプ・水中の立ち木と、
4m減水の典型的なリザ−バ−の岸辺だ。
絶好のストラクチャ−が続くが、ノ−ヒット。朝7時に朝食。
日差しがどんどん強くなるのを肌に感じる。もうここには、いられない。
稜線を走る林道の木陰に避難する。
樹冠が空を覆って、木漏れ日が広げたテ−ブルに落ちている。
周囲は手入れされた杉の植林である。
ここに降った雨は、樹冠とシダ等の地衣類に受け止められて、ゆっくり静かに
清澄な流れとなって湖に入るのだな、樹木が伐採されれば降雨はたちまち泥流
となり…と相棒がつぶやいている。
若い時に見過ごしていた自然の仕組みのことも、40才を過ぎれば見えてくる。
本を読み、昼寝をして夕方の5時から高滝湖を攻める。
50cm程の減水で水温は高い。浅場と深場を試してみるが、魚に反応はない。
釣果は二の次。久しぶりに心身の充電をした夏の日であった。
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