「合わせろ〜っ」
「FISH ON! うっ、重重しい この引きは何なの〜っ」
「・・」
「くっ、また潜った」
みゆきは、ロッドの弾力を活かし、こらえつつ、素早くリ−ルを巻いている。いつもコ−チするたび感じる、素晴らしい反射神経と身のこなしだ。
「ようし、その調子だ」
「上がってきたわ」
「フックの位置を確認して!」
「大丈夫よ、上顎に、しっかりと・・」
パソコンのディスプレイも最近では、複数別画面を同時に完全表示したり、A4版10ペ−ジを一覧表示できる大型ディスプレイが主流となり、かつ、目から大型ディスプレイの端部迄が等距離に設計された湾曲型になり、ちょっとしたコックピット気分である。もう久しく以前、国策により国内電話料金は無料となり、昔風に言えば「繋ぎっぱなし」だから時間を気にせずに済むのは、ありがたい。みゆきの胸元のワイヤレス小型マイク・スピ−カ−は、携帯電話本体をバッグにしまったまま使え、切り替えによりアマチュア無線のトランシ−バ−にも連動する便利グッズだ。
「うわぁ、大きい 70アップよ」
「腰を落として膝を舟べりに付けて、しっかりハンド・ランディングするんだぞ!」
「えぇ、まかせて頂戴!」
もう20年も経つだろうか。2005年12月、若き健次郎は亀山湖レコ−ドを大きく更新する、70.5cm・5100gをキャッチ&リリ−スしている。ルア−は yoshi's のインパクト、カラ−はブル−・クリア−である。水溶性プラスチック素材のインパクトは、往年の分類に従えばミノ−であるが、着水後10秒でアウタ−のオイカワ(ブル−部)が溶け、インナ−のアユ(クリア−部)が出現するというトリッキ−・ルア−の元祖であった。最近の亀山湖は60アップが当然として、80アップの噂さえ聞かれる釣り人垂涎の夢の舞台である。健次郎のように在宅で同船せずに、亀山湖のコ−チ業が成立するのも、インフラが整備されたからに他ならない。24時間×365日稼働のライブ・カメラ装置は亀山湖の30ケ所に40台余りが設置され、誰もが自分のパソコンからインタ−ネットを経由して、カメラのパン(左右移動)・仰角調整・ズ−ミング(倍率調整)が自在にできるのだ。台数が多いため、制御権争奪も必要なく、15台は赤外線暗視装置も併設されているから夜間の災害にも有用というわけだ。