インストラクタ−になって、2年目になる。
今回は、世にも珍なる商売、フィッシング・インストラクタ−の
1日をご紹介致しましょう。
「おはよう御座います」
「釣れますか(ましたか)」
「今日は、○○をこうやって使って、○○を攻めるのが、良いと
思います」
「お疲れ様」
マニュアルなどないけれど、これがインストラクタ−の常套句。
明るく、ハッキリと、やや遠慮気味に、それでいて絶好のタイミング
に、自信を持って声を掛けることが要求されるのだ。
(
?なんだソレ!)。
ボ−ト店に出勤すると(出勤ですよ、出勤!)、旦那(世にいう社長
さん・スポンサ−殿)への挨拶もそこそこに、桟橋へ向かう。
インストラクタ−の目印にしている、
赤いBPS(バスプロショップス)
の帽子
だけかぶって、あとは手ぶらで、よろし。
足元と左右に眼を配って、進むと、「あった!」。
駐車場で、捨てられたオフセットフックを回収。
続いて桟橋で、ラインやらグラブ、ジグヘッドからシンカ−、
食べ物の包装紙まで、アレヤコレヤを回収。
何のことはない。そう、ゴミ拾いです。
お客様に、気持ち良く利用して頂けるよう、(フックが履き物を
貫いて)危険がないよう、自然分解しないゴミが、亀山湖に沈まぬ
ようにと、これも大事な仕事です。
さて。
「赤いフットタ−ボ号」に、ロッドとカフェインを積んで、河岸払い。
乗って解ったけれど、地球環境にやさしい人力舟は、正直なところ、
チトつらい。
脚で漕ぐのだから、近場(ソノヘン迄)は良いのだが・・。
とても医院下やら、神社下などの遠方へは、行けません。
ましてやダムサイトなど!
みなさ〜ん! 声を掛けてもらいたい人は、白鳥島・岩の上島・つぼりと・熊の塚
カラス宿・角柳・漆淵・竹薮下・亀山大橋付近に居て下さい(と、これはお願い)。
さてさて。
リクエストがあれば、
「いついかなる条件下においても、1尾釣って見せなくてはならない」
のが、フィッシング・インストラクタ−だと心得るから、
たいていの場合、このよしさん、自分で1尾釣ります。
(大減水あり、台風ニゴリあり、低水温あり、高水温ありで、
これも結構むずかしいものなんですネ。ハイ。)
それから、「釣れますか(ましたか)」と、手近の舟に声を掛ける
ことになる。
スポンサ−の店のボ−トとは、限らない。
よしさんのいるエリアに入ってきた舟なら、どの店の舟も平等です。
(そうできるのも、太っ腹のスポンサ−殿のおかげです。感謝。)
釣れないという仕掛けを見せてもらい、改良のアドバイスをする。
釣って見せてというリクエストに、シシィベイトで小物を釣って
披露する。
よしさんの気分が良く、お客様と(湖上談義で)ウマがあえば、
「このルア−を試して下さい」と、振る舞ってしまうことさえある。
(ホントに本当です)
桟橋で、こんなことがあった。
親子がボ−トに乗り、お父さんがオ−ルを持った途端に、「アッ!」。
お父さんの右の手のひらに、トゲが刺さっている!
小学生が、よしさん執刀の切開手術(?)を恐怖の目で見ていたっけ。
(ナイフは、こうやって使うんだよ、坊や!)
ナイフとBAND−AIDは、釣りの必携品です。
また、ある雨の上がった午前。
桟橋に帰ってきた舟に水がたまり、お客様の足元が水没寸前。
バケツで汲むには少な過ぎ、放っておけばスニ−カ−は「沈」。
ふと見れば、舟には「おいしい水」の空きボトル。
PETボトルは、よしさんのレザ−マンツ−ル(のナイフ)で
二分され、格好の水汲み容器に変身しました。
そうこうしていると、やがて夕刻。
桟橋から、帰ってくる舟に手で合図を送る。
舟からは桟橋の、どの位置に空きがあるのか、解らない。
だから左腕をいっぱいに差し出して、「左へどうぞ!」と、
沖の舟に、ジェスチャ−と視線を送る。
「お疲れ様」と声を掛け、舟を舫う。
あっ!そうそう。
フィッシング・インストラクタ−を目指す人(いるのかネ)への、
アドバイス。
この商売、釣りの技術だけでは、どォ〜にもなりません。
技術なら、アウトドアライフの全般が要求されます。
俗に心技体と言いますが、ここでの優先順位は心体技です。
Conservetionを含めて、包括して亀山湖を愛する心。
亀山湖が好き。
いつまでも美しい、亀山湖であって欲しい。
訪ねてくれた釣り人に、気分よく楽しんでもらいたい。
ここは、われらのハ−トランド。
夢の舞台、世界の亀山湖なのだ、という心。
技よりも、心がなければ、始まりません。
よしさんは、単なるフィッシング・インストラクタ−に
満足しているワケデハありません。
もっとグロ−バルに、流域全体の自然環境にも眼を向け、
人と自然の調和を守りたいと、密かな志を抱いているのです。
よしさんの好きな言葉を、ひとつ。
志は、いくら大きくても、咎める人はいない。
ではまた。