特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づくよしさんのパブリックコメント 亀山湖と笹川湖は生態系の破壊された人造湖、琵琶湖とは違います
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づくよしさんのパブリックコメント

     

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
に基づくよしさんのパブリックコメント

失望させないでね 届けよ、民の声
よしさんのパブリックコメント
今回の「特定外来生物等の選定について」のパブコメには、 合計113,792通 の意見がありました。 2005年04月05日、環境省発表 「特定外来生物の指定対象等に係るパブリックコメントの意見の理由と対応の考え方」より、 本意見そのもの、または本意見の含まれる意見と、国の考え方(回答)を対比し、最下段に掲載しています。

[意見提出用紙]2005年02月22日送付
[件名]特定外来生物等の選定について
[宛先]環境省自然環境局野生生物課
[氏名]吉田義明
[郵便番号・住所]〒284−0044 千葉県四街道市和良比286−23
[電話 番号]043−432−5585
[FAX番号]043−432−3666
[御意見]

1意見の対象となる種 オオクチバス

2意見の概要(100字以内で記載)
オオクチバスを特定外来生物の指定対象とすることに反対する。 また、もし指定対象に選定するのであれば、水域と地域の区別評価を行い、特に人造湖は本法の適用 除外とするよう要望する。

3意見及び理由
★まえがき★

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以下「外来生物法」という。)に基づく 特定外来生物等について、特定外来生物等専門家会合において指定対象とすることが適切であるとされ た、オオクチバスについて以下に述べる理由により、特定外来生物の指定対象とすることに反対する。
(1)国内導入種の現状との見合いにおいて、不公平感を生ずるおそれがあるため指定に反対する。
(2)生息する水域の区別評価のない「外来生物法」下では、オオクチバスの指定に反対する。
(3)有効利用している地域の区別評価のない「外来生物法」下では、オオクチバスの指定に反対する。
第1章で、本意見に用いる、「生態系」「外来種」「導入」等の用語を定義する。
第2章で、意見(1)の詳細理由を述べる。
第3章で、意見(2)の詳細理由を述べる。
第4章で、意見(3)の詳細理由を述べる。
第5章で、もし指定対象に選定するのであれば、要望したい事項の詳細を述べる。
【注】
引用部分は「カッコ」内に原文のまま記述し、その直後に引用文献または参考ホームページを示す番号を 《100》のように付し、出典は最終段にまとめて記載した。

★第1章★
本意見に用いる、「生態系」「外来種」「導入」等の用語の定義
(1−1)
生態系を「ある地域の生物群集とその周囲の環境を合わせて生態系とよびます。 」《100》と定義する こともあるようだが、本意見では、もう少し具体的に「[水][大気][土][太陽の光]、そしてこれらに支え られて生きる[さまざまな野生の生きもの]の5つの要素で成り立つ自然生態系。」《101》と定義する。
(1−2−1)
環境庁(当時)が2000(平成12)〜2001(平成13)年度の2年間で実施した「移入種問題対 応指針の検討について」の野生生物保護対策検討会移入種問題分科会(通称:「移入種検討会」:自然保 護局長委嘱)の「第2回移入種検討会、2000(平成12)年10月13日開催」における「移入種」 の定義は、「国外又は国内の他地域から、人間の媒介により意図的・非意図的(結果的)に、本来の自然 分布域外に移動された種(亜種・変種を含む)。」《102》とされる。
また「侵入種」の定義は、「移入種のうち、野外において定着し、在来の生物多様性を変化させ、脅かす もの。」《102》とされている。
(1−2−2)
その後2002(平成14)年04月の、生物多様性条約第6回締約国会議決議の、「生態系、生息地及 び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原則(仮訳)」の脚注に挙げられた用語 の定義においては、
「(i)”alien species”(外来種):過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、それ 以下の分類群であり、生存し、繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を 含む。
(A)”invasive alienspecies”(侵略的外来種):外来種のうち、導入(introduction)又は、拡散した 場合に生物多様性を脅かす種(今回の指針原則では、”invasive alien species”は生物多様性条約締約 国会議の決議X/8における”alien invasive species”と同じとみなす)
(B)”introduction”(導入):外来種を直接・間接を問わず人為的に、過去あるいは現在の自然分布 域外へ移動させること。この移動には、国内移動、国家間又は国家の管轄範囲外の区域との間の移動があ り得る。
(C)”intentional introduction”(意図的導入):外来種を、人為によって、自然分布域外に意図的 に移動又は放逐すること。
(D)”unintentionalintroduction”(非意図的導入):導入のうち、意図的でないものすべてを指す。
(E)”establishment”(定着):外来種が新しい生息地で、継続的に生存可能な子孫を作ることに成功 する過程のこと。
(F)”risk analysis ”(リスク分析):
(1)科学に基づいた情報を用いて、外来種の導入による影響とその定着の可能性を評価すること(すな わちリスク評価)、及び
(2)社会経済的、文化的な側面も考慮して、これらのリスクを低減若しくは管理するために実施できる 措置の特定をすること(すなわちリスク管理)。」《103》とされている。
したがって、引用《102》の「移入種」と引用《103》の「外来種」は、ほぼ同意に見え、以下で述 べる「外来種」は、上記引用《103》の定義を用いる。

★第2章★
理由(1)国内導入種の現状との見合いにおいて、不公平感を生ずるおそれがあるため指定に反対する。
(2−1)
第1章で確認したように、環境庁(当時)のいう「移入種」《102》も、生物多様性条約第6回締約国 会議決議のいう「外来種」《103》も、その意味は「国外または国内を問わず、他地域から自然分布域 外に人為的に移動された種(亜種・変種を含む)(亜種、それ以下の分類群)」を定義している。
国内と世界にこのような潮流がある中、このたびの「外来生物法」第2条では、『この法律において「特 定外来生物」とは、海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存するこ ととなる生物(以下「外来生物」という。)であって、(以下略)』と、国内移入種・国内導入種が忽然 として姿を消し、削除されている。
そこに、国内導入種の現状との見合いにおいて、不公平感を生ずるおそれの源がある。
上述のように、国際的にも了解された「外来種」の元来の定義は、「本来そこにいなかったもの」であっ て「国外または国内を問わず」であった。
「外来生物法」においては、元来の定義を根底から覆し、「外来生物」「特定外来生物」という用語が、 国内移入種・国内導入種を範囲外とし、海外導入種のみを対象とする定義に変更したことにより、あたか も、「在来種の受ける可能性のある、生態学的脅威と影響の全ては、海外導入種にある」ような誤った印 象を国民に与え、植えつけかねず、かくされた真の目的があるのではないかと、国政に大きな疑問を抱か ざるを得ない。
すなわち、「外来生物法」の国内移入種・国内導入種版の立法確約がなされないことにより、国内移入種 ・国内導入種の拡散・蔓延時、または拡散・蔓延のおそれの生じた場合において、在来種が受ける可能性 のある生態学的脅威と影響の検討への道、また必要による規制の門が閉ざされていることへの疑念である。 その範囲は、本意見で主に述べる魚類に限らず、哺乳類・鳥類、爬虫類・両生類、昆虫類、無脊椎動物、 さらに植物と広範囲にわたることを思うとき、危機感に近いものを強く感じる。
「象徴として目玉だからオオクチバスを指定すべき」という趣旨の発言が報道されるにおよんで、海外導 入種の『オオクチバスさえ指定すれば、「外来生物」は対策済みの風潮が生まれ、国内移入種・国内導入 種に起因する可能性の高い生態学的脅威と影響が忘却されるであろう』との政治的思惑があるかのように さえ見えるのである。
(2−1−1)
国外または国内を問わず、他地域からの「外来種」が、在来生物に被害を及ぼし、または及ぼすおそれが ある生態学的脅威の種類は、環境庁(当時)が2000(平成12)〜2001(平成13)年度の2年 間で実施した「移入種問題対応指針の検討について」の「背景、目的」に示されるように、
「近年、国外又は国内の他地域から本来の野生生物が持つ移動能力をはるかに超えて意図的・非意図的に 移動・移入した種(移入種)が増加しており、地域固有の生態系や生物相の存続に対する大きな脅威とな っている。移入種の影響は、在来の希少種等の捕食、競合する在来種の駆逐などの直接的な影響だけでな く、近縁種との交雑による遺伝的汚染、採餌行為による植生の破壊などの間接的な影響も含め広範囲にわ たる。また、関係する分野も家畜、園芸、ペット、内水面漁業、輸出入など、多岐にわたるため、問題の 構造は極めて複雑である。」《200》と、される。
本意見の第1章・定義に示した「外来種」の内、前項で指摘した「国内移入種・国内導入種の拡散・蔓延 時、または拡散・蔓延のおそれの生じた場合において、在来種が受ける可能性のある生態学的脅威と影響 」につき、魚類関係分野に限定し次項で先ず「捕食・食害」を考察する。
(2−2)
「在来の希少種等の捕食」という観点からは、「外来種」(魚類)とて生物である限り、何らかの物質を 摂取するのは当然である。
動物性プランクトン食なら動物性プランクトン、植物性プランクトン食なら植物性プランクトン、藻類食 なら藻類、昆虫食なら昆虫類、環虫食なら環虫類、甲殻類・貝類食なら甲殻類・貝類、魚食なら魚類、草 食なら草類、を主に移入先水域で食べることになる。
イトウならヘビやネズミやウサギを、渓流魚なら両生類を食べることは知られている《201》《202》。
動物性プランクトンが貴重であれば食害されたこととなり、植物性プランクトンが貴重であれば食害され たこととなり、藻類が貴重であれば食害されたこととなり、昆虫類が貴重であれば食害されたこととなり、 環虫類が貴重であれば食害されたこととなり、甲殻類・貝類が貴重であれば食害されたこととなり、魚類 が貴重であれば食害されたこととなり、サンショウウオが貴重であれば食害されたこととなり、ヘビが貴 重であれば食害されたこととなる。
また、食べられる側の全種がそろって全ての移入先水域に備わっており、かつ、備わっている全種が希少 種である組合せは、むしろ稀であろうから、「在来の希少種等の捕食」が発現する事例はきわめて可能性 が低く、限定された水域になると思われる。
サケ科のヤマメ(降海型・湖沼型ではサクラマス)、アマゴ(湖沼型ではビワマス)、ニジマス、イワナ 等は昆虫・クモ・ミミズ・カジカ卵・小魚等を常食とし、ビワマスは琵琶湖でコアユやイサザ等の小魚を 餌としている《203》との報告がある。
田子倉ダムの貯水池(田子倉湖)では、イワナやサクラマスがワカサギを飽食している《230》との信 頼すべき目撃報告がある。
従って、多数の外来生物の中から特定外来生物を選定する時に、単に食害を主たる根拠としオオクチバス を選ぶ必要はない。
(2−3)
本項では、先に指摘した「国内移入種・国内導入種の拡散・蔓延時、または拡散・蔓延のおそれの生じた 場合において、在来種が受ける可能性のある生態学的脅威と影響」につき、魚類関係分野に限定し「競合 する在来種の駆逐にあたる事例」「近縁種との交雑による遺伝的汚染」「在来動物プランクトン相の増減 への影響」を、小項目ごとに順次検証する。
(2−3−1)
「ヘラブナ、カワチブナ(河内鮒)は本亜種を人工的に飼育したもので」と、琵琶湖特産のゲンゴロウブ ナ(琵琶湖地方の呼称はマブナ)の亜種を、人工的に飼育したものをヘラブナ(関東地方の呼称)・カワ チブナ(大阪の呼称)と称し、ゲンゴロウブナとヘラブナを区別する中村守純博士の説《203》もある が、ゲンゴロウブナとヘラブナ・カワチブナを同一とする宮地伝三郎博士・川那部浩哉博士他の説《20 4》もある。
「1658(万治元)年にすでに関東へ移した記録があり、現在では日本全国へ移植されて、湖・池・沼 で増え、また養殖池でよく飼育されている。」と「外来種」移殖の歴史が紹介されている《204》。
ヘラブナ釣り黎明期からの大先達は「ゲンゴロウブナに着目した養魚家が養殖にのり出したのは、明治末 期近くのことで、ギンブナとの交配によって新種が作出されたが、その養殖族を野性のゲンゴロウブナと 区別するために、学者は「河内ブナ」とよぶ。これがわれわれの相手になってくれるヘラブナなのである」 「大正の末期近く、関西にデビューしたヘラ釣りが関東に移入されたのは、十年後の昭和5、6年ごろで あった。昭和5年、東京蒲田の鹿島田養魚場に初めて少量移入されたが、規模が小さく一般に知られなか った。翌6年、同じ蒲田のフナ、コイの釣り堀・釣楽園が、六百貫を移入、本格的ヘラ池を開業、その後、 東京大田区長原小池へ移った。すなわち関東のヘラ釣り堀の草分けで、」と記され、ヘラブナが大正の末 期(1920〜1921か)近くに誕生した様子と、鹿島田養魚場および釣楽園への移入が1930〜1 931(昭和5、6)年であったこと、さらに「もっとも古い記録は1928(昭和3)年、近江守山町、 魚和商店が関東向けに出荷したものである。」《205》と伝えている。
「カワチブナは分類学的にはゲンゴロウブナと同じであるとされているけれども、実際に琵琶湖で漁獲さ れた多数のゲンゴロウブナと大阪地方のカワチブナを比較すると、ゲンゴロウブナは頭部が大きく、頭の 後方での背部の隆起がカワチブナ程きわだって大きくなく(以下略)」と、の形態的相違や生態的相違を 指摘する研究者もいる《206》。
植物性プランクトンを主食とし、琵琶湖から移入された一見おとなしそうなゲンゴロウブナも、移入種と して在来種に被害を及ぼした例がある。
「群馬県にある城沼というところへは、戦後にこれが移入され、年々増加していった。ところがそのかわ りに昔からいたギンブナのほうは激減してしまったのである。」
「戦前には、キンブナが底に、ギンブナが表層にと、うまくわかれて生活していた。ゲンゴロウブナの移 入によって、ギンブナは今までの地位を追われ、キンブナに妨げられて底層生活に移ることもできず、さ らに浅い城沼では中層もないので、この中道派は、ついに個体数を減じてしまった。」《207》と、 ゲンゴロウブナが、ギンブナ(関東地方の呼称はマブナ)の脅威(競合する在来種の駆逐)になる事例を 川那部浩哉博士が紹介している。
養魚家によるヘラブナ・カワチブナの作出起源は、大正の末期(1920〜1921か)近く《205》 とされ、琵琶湖水系の固有種ゲンゴロウブナ《208》と、ヘラブナ・カワチブナを区別する説を信ずれ ば、「1658(万治元)年にすでに関東へ移した記録があり」《204》が指すのは琵琶湖水系の固有 種ゲンゴロウブナに相違ない。
琵琶湖水系とは隔絶した水系に、琵琶湖水系の固有種ゲンゴロウブナを移入した古い事例である。
一方、ゲンゴロウブナと、ヘラブナ・カワチブナを同一とする説に立てば、琵琶湖水系の固有種ゲンゴロ ウブナは「現在では日本全国へ移植されて、湖・池・沼で増え、また養殖池でよく飼育されている。」 《204》という「外来種」全国移殖蔓延の身近な事例となる。
(2−3−2)
アユは姿が美しく、独特の香りを持ち、釣り人にもファンは少なくない。
河川でふ化した稚魚は海に達し、翌春河口から上流へと上る習性は、良く知られている。
では、現実に魚道のない高い堰堤の上流やダム上流等、海からアユが物理的に溯上できない河川区域にも アユがいるのは、なぜであろうか。
「私の住む上田市の南側を流れる千曲川もアユ河川として有名である。だが、天然アユは1尾もいない。 すべて放流コアユである。」《220》、
「琵琶湖では小さくても、他の河川に放流されると普通の大きさに成長します。そのために放流用の琵琶 湖のアユが生産されて、全国に出荷されています。アユ釣りで有名な日本全国の川で、琵琶湖生まれのア ユが元気に泳いでるいうわけです。」《221》、
「小アユの種苗が最初に放流されたのは関東を流れる多摩川の上流で、1913(大正2)年06月01 日のことでした。以後、小アユの移殖は年を追って盛んに行われ、今日では琵琶湖で最も重要な魚種にな っています。」《222》等から明らかなように、主に琵琶湖産アユ(コアユ)を各地に移殖(移出と移 入)導入してきたからである。
ここでアユ(海から上る天然もの)とコアユの関係について「(アユは)溯河魚類の1つであるが、環境 の状態によっては海へ下れない場合もある。このようなときは一生涯、淡水域だけに生活しているわけで、 このような状態を陸封されているという。琵琶湖のコアユはアユの陸封されたもの、すなわち陸封型であ る。したがってアユとコアユとは全く同種の魚とされている。」《223》と、1913(大正2)年に 石川千代松博士が実験した「コアユも川へ放流すれば大きくなる」《224》という物理的な体のサイズ 成長のみを根拠とする説があるが、他方、「同じ川に(海産の)稚アユとコアユとを同時に放流しても、 コアユの方の産卵期が一カ月あまりも早いことはすでにのべたが、そのほかにも、いろいろなちがいがあ るように見える。」
「まっさきに問題になるのは、なわばりを持つ性質である。友釣りをおもにする川では、なわばりを作っ てくれないとおもしろくない。漁師は海産アユよりも湖産アユの方が気性がはげしいという」《224》 性質の違いを見抜く宮地伝三郎博士の説がある。また、
「種の分化の過程を探るうえで、最も適した材料は、まさに分化しつつある種である。そうしたものの一 つに、東幹夫さん(現在、長崎大学)が詳しく紹介した琵琶湖アユの種内分化についての研究がある。」
「(コアユの)各集団が琵琶湖という、古い歴史(約200万年)をもつ安定した水系の環境条件と深い 係わりをもちながら、湖内で同所的に分化した可能性がある、と考えるようになった。」
「今後、琵琶湖アユの各集団がいっそう分化を深め、新しい種形成へ発展していくのか、それとも多様性 を保ちながら一つの種としての統一性を維持していくのかは、アユ自身が決めることであり、私たちにも わからない。」
「琵琶湖アユという種の内部で、生長と発育の関係の仕方における変化と結びついて生態的分岐が起り、 それが各集団間の隔離の重要な要因になっているという事実は、同所的種分化の可能性を具体的に示唆す るたいへん興味深い実例であることだけはまちがいない。」
《225》と、コアユ各グループの「同所的種分化」の可能性を詳しく指摘する学者の声もある。
導入先では、「河川の産卵場で海産系と琵琶湖系の新アユが混在していることもありますから、両者の混 血ができる可能性もないわけではありません」《226》という観察がなされている。
農林水産省中央水産研究所魚類生態研究室の心ある研究者は「琵琶湖にアユが侵入してから地質学的時間 が経過し、特異な性質が形成されてきたことは事実に違いない。その間に、亜種レベルとまではいかない までも、遺伝的な分化を遂げている。」
「陸封環境に適応した集団を、両側回遊の環境に再び連れだそうとする試みが人為的に行われているので ある。」
「湖産・海産間でなわばり適地をめぐる競合が生じた場合、不利になるのは海産のほうである。なわばり を持てない個体が多くなると、成熟時の体サイズは平均的に小さくなる。集団全体の産子数が少なく抑え られると、次世代の資源水準は低調なものにならざるを得ない。さらに、両者の産卵期にはズレがあるも のの、完ぺきに分離されるものではなく、重複期間があることが多い。水槽内に成熟した海産アユと湖産 アユを同時に収容し産卵環境を整えてやると、両者は容易に交雑することが観察される。野外で湖産と海 産の交雑が起こる可能性は、否定できない。湖産と海産を人為交配させると、次世代の産む卵のサイズは、 両者の中間的な値を示すという報告がある。塩分耐性の違いにより、交雑次世代の子の海域における生存 率は、海産のそれに比べて低くなることが予想される。湖産アユの導入により、在来の海産アユ集団が、 両側回遊的な環境に適さない形質に”垂直感染”するのではないかと懸念される。」《227》と、琵琶 湖から日本全国の川に移入されたコアユが在来種にもたらす影響に警鐘を鳴らしている。
(2−3−3)
日本の渓流魚を代表させて、イワナについて考えてみる。
「そして、人は在来種の減少をなぜか養殖した岩魚で補い始めたのだ。その結果、あの岩魚に与えられた 幻の魚という言葉もすっかり色褪せてしまった。ちょっとした山の温泉へ行けば「幻の魚・岩魚」の料理 が簡単に出てくる時代となってしまったのである。急速にいなくなっていく在来の岩魚、その地方独特の 姿をした岩魚がどんどん養殖岩魚にとって代わられているのが現在の岩魚の置かれた立場である。」
「とてつもないような山奥で、絶対に養殖岩魚など放流されるはずがない、と自信を持って行った谷の幾 つかで、完全に人工的な岩魚が入っていたからだ。」
「養殖ものを放流した場合は大抵は分かるが、他の地域にいた「在来種」を釣り人が勝手に自主放流した ような場合、それを見分けることは非常に難しい。」
《230》と、上流・源流部における養殖種の導入による、競合する在来種の駆逐や、近縁種との交雑に よる遺伝的汚染に危機感を持つベテラン釣り人がいる。
イワナ等の渓流魚は、比較的新しい時代に開始された養殖種の導入以前に、国内の他地域からの意図的移 動・人為的移入(導入)の永い歴史がある。
「マタギや職漁師による移植や放流は、自らの漁場を拡大する意味で必然のことであっただけに、その事 例は数限りない。中でも、北アルプスの黒部川源流が代表的な事例だ。かつては、兎平の下流に懸かるわ ずか4mほどの滝が魚止めであったが、今では、何と標高2300m地点まで生息している。黒部川源流 は、歴史的に職漁師たちの漁場であり、日本最標高のイワナは、彼らの度重なる放流の所産なのだ。」
「基本は、同一水系で捕獲した渓魚を滝上に放流する方法だった。もちろん、分水嶺を越えて魚のいない 別の水系へ移植を行っているのも事実だ。」
「在来のイワナやヤマメ、アマゴが絶滅危惧種に指定されることなく生き延びてこれたのは、マタギや木 こり、木地屋、職漁師、山菜採り、炭焼きなど、山棲みの人たちの移植や放流があったお陰だと思う。」 《231》等の記述から、渓流魚の人為的移入の起源は古く、広範囲であり、かつ、永年に亘り日常的に 確信を持って繰り返されたことが、分かる。
養魚場の養殖研究者も、「イワナの養殖といってもいろいろとあり、岩手・山形県を主としたアメマスや 交雑種がおもで、ニッコウイワナやヤマトイワナはあまり養殖されていない。今出回っているイワナはア メマス以外は交雑種といっても間違いない。」
「養魚場のあるここ只見町はニッコウイワナの分布域だが、イワナ釣りで有名な黒谷川や叶津川でアメマ スや雑種が釣れる。放流用のニッコウイワナの稚魚の絶対数が足りず、経済性を優先させんがため、イワ ナであれば種類などおかまいなしに放流しているからだ。せっかくイワナを町の魚に指定し、町あげてイ ワナの復活に力を注いでいるのに、これではミイラ取りがミイラになり何もならない。」
「イワナとカワマス(ブルック・トラウト)は簡単に雑種が出来る。種が同じだからである。イワナは病 気に強いが成長が遅い、一方カワマスは病気には弱いが成長が早い。これらを交配した雑種は成長が早く、 病気に強い魚になる。しかしこの性質も一代限りで終わり、二代目以降は劣性の性質が現れる。雄は不稔 になり問題がないが、雌は成熟しイワナやカワマスと雑種を作る。だからカワマスや雑種を川に放流する と川のイワナと交配し、代を重ねるごとに繁殖力が低下してイワナの数が減る。」
《232》と、地域の行政的メンツと経済性優先の無手勝流の放流実態を暴露し、交雑種による劣性遺伝 の弊害や純血在来種の減少に、心を痛めている。
イワナについては、専門家による分類学的論争の概要やひとつの結論が、「日本のイワナ属は、その陸封 型にかんするかぎり、これを分布上からみると、マルマ、リュウコメニス、リュウコメニス・イムブリウ スの2種1亜種が中心部から周辺部へかけて棲みわけたもの、ということができる。もっとも、リュウコ メニスにはそのなかにクラインとしてほぼ南北に並んだ3つの型を認めることができるけれども、(以下 略)」
「私はリュウコメニスに対比されるべき和名としてはイワナ1本でよいと考える。大衆がイワナといって いるものを、学者がわざわざエゾイワナだとかニッコウイワナだとかいって、もったいぶる必要はない。 マルマとイムブリウスも広義のイワナにはいりはするが、これらにはもともとオショロコマとゴギという 呼称があるのだから、それをそのまま使ってゆけばよいであろう。」1967(昭和42)年に提示され ている《233》ことも承知してはいる。
オショロコマとゴギの他には、日本のイワナは1種で、その1種に3つのクライン(cline)があるとし ても、クラインを別のクライン生息圏内に放つ行為は、いかがなものであろうか。
また別の次元で、生態系を無視し、需要と供給の関係から「在来のイワナの生息圏内に、イワナとカワマ ス(ブルック・トラウト)の雑種を商業的に導入・放流する」ことなどは、放流禁止の法律や規則のある や否かにかかわらず、賛成しかねる。
地方自治体が主導しての放流であるなら、なおさらである。
(2−3−4)
先住移入種と後続移入種間における餌の選択で有名な例として、十和田湖におけるヒメマス(ベニマスの 降海性を失った型)とワカサギの事例がある。
魚類の生息していなかった十和田湖に漁業者の手によって1903(明治36)年に北海道支笏湖からヒ メマスの種卵を移殖・ふ化放流以来、ヒメマスが十和田湖の重要な水産資源となり、増殖事業は、195 2(昭和27)年に水産庁がふ化施設を借り受け十和田湖ふ化場とし、その後秋田県・青森県に移管、さ らにふ化場の管理運営は漁業協同組合に委託されている。
「十和田湖では、ワカサギの導入により動物プランクトン群集への捕食圧があがり動物プランクトンが小 型化したと考えられた。つまり、比較的大型のハリナガミジンコとヤマトヒゲナガケンミジンコが減少し、 捕食者に対してより感受性が低い小型のゾウミジンコとワムシが優占する系に置き換わってしまった。 ハリナガミジンコは利用できる餌のサイズの幅が広く、かつ、濾食速度が早い。従って、1984(昭和 59)年までの十和田湖沖の生態系は、植物プランクトンのほとんどがハリナガミジンコにより効率よく 摂食され、それがヒメマスへと効率よく転換していたと考えられる。 しかし、ワカサギの導入後優占するようになった小型のゾウミジンコやワムシは、利用できる餌のサイズ の幅が狭く濾食速度も遅い。従って、湖水中に食べられないで残る植物プランクトンが増え、これが湖水 の透明度の低下をもたらしたと考えられた。」
「秋田県水産振興センターのヒメマスとワカサギの胃内容物の調査によると、ヒメマスは漁獲量が高い時 期は、ハリナガミジンコとヤマトヒゲナガケンミジンコをよく食べていた。 しかし、漁獲量の低い時期は、ユスリカの幼虫や蛹、ヨコエビ、陸生の昆虫、時には幼魚を食べており、 ゾウミジンコとワムシ類は食べていなかった。 ヒメマスの雌の体重は漁獲量と連動していたので、十和田湖の場合、ハリナガミジンコとヤマトヒゲナガ ケンミジンコ以外の餌ではヒメマスは十分に成長できない。 一方、ワカサギはその漁獲量と無関係に常に枝角類、カイアシ類およびユスリカの幼虫や蛹を食べていた。 つまり、ワカサギがゾウミジンコ(十和田湖の場合はおおよそ0.3mm)のような小型の動物プランクトンも 幾分食べることができるのに対し、ヒメマスは小型の動物プランクトンを食べることができないらしい。 ヒメマスは0.6mm以下の大きさの動物プランクトンは食べることができないとの報告がある(Schneidervin &Hubert 1987)。 こうした摂餌生態の少しの差が、ヒメマス漁がワカサギの漁獲に比べ、より際立って落ち込んだ理由と考 えられた。」《234》、簡単にいうと、後続移入種ワカサギの捕食圧により在来動物プランクトンが小 型化し、大型の在来動物プランクトンを捕食していた先住移入種ヒメマスの漁獲が減少したとの研究報告 である。
(2−4)
検証してきたように、移入種が問題となるのは、在来生物等の捕食(食害)に限らず、在来種ならびに在 来の近縁種との交雑による遺伝的汚染という決定的に重大な要素をはらみ、生活様式や採餌で競合する在 来種の駆逐、先住移入種への大きな影響、さらには在来動物プランクトン相の増減への影響や、連動して 水質悪化(湖水の透明度の低下)の招へい等のトリガーになっていると考えられるからである。
それら「国内移入種・国内導入種の拡散・蔓延時、または拡散・蔓延のおそれの生じた場合において、在 来種が受ける可能性のある生態学的脅威と影響」の危惧が専門家により報告されながら、現状はどうなっ ているのかにつき、本項小項目ごとに考証してみる。
(2−4−1)
第1にコアユの例をあげれば、日本の主要な河川に琵琶湖産のコアユが導入され、釣られている。
本章で既に指摘した、「地質学的時間が経過し、特異な性質が形成され、遺伝的な分化を遂げている」こと、 および「交雑種による劣性遺伝の弊害の可能性」という複数の専門家の説は、重い意味を持ち、厳粛に受け 止められるべきものと理解する。
琵琶湖を、「外来種による自然生態系等に係る被害から守ろうと積極的に努力している」と自称する人々か ら、「琵琶湖産のコアユを日本全国に導入してはいけない」「琵琶湖産のコアユ移出により、日本全国の在 来自然生態系を遺伝的に汚染する可能性を提供してはいけない」という声や、国への陳情が聞こえないのは、 まことに不思議な現象と感じる。
あるいは、生物多様性の保全を声高に主張する人々《240》《241》《242》から、 「琵琶湖産のコアユ移出は、日本の在来自然生態系への負の拡散を意味する学説があり、移出を禁止すべき である」という予防保全的立場の啓蒙運動が声高く開始されぬのは、とても怪奇な印象を受ける。
なかでも、国民の代表とされる国会議員から、例えば『コアユについては、移入、飼養、運搬、保管、譲渡 譲受等を規制することができ、いわゆる適正に管理された釣り堀に関しては、「許可規制を行うことで遺棄 や逸出等に対して十分な抑止力が働く生業」は許可の対象とすべき。』という趣旨の法案や基本方針が提出 されぬのは、遺憾なことである。
専門家の説が正しいなら、コアユは長期的に水産資源の減少を招き、ならびに生態系破壊に大きな加担をし ていることが明らかだからである。
琵琶湖のアユの漁獲量は、滋賀県水産課資料「琵琶湖漁業魚種別漁獲量」《244》から、1954(昭和 29)年〜2001(平成13)年の48年間平均で毎年「1000〜1500トン程度」と、読取れる。
総漁獲量に占めるアユの割合を最近20年分でみると、少ない年で25%、多い年で46%、平均して約3 5%程度となる。
出荷金額に直した漁獲高資料が見当たらないが、一般にアユは他魚より高価であるため、総漁獲高に占める アユの割合は、総漁獲量に占めるアユの割合の2倍、平均して約70%程度となるであろう。
かなり古い資料であるが、「漁業・養殖業漁獲統計表1956・1958」によれば、「日本全国の川魚漁 獲量と漁獲高で、アユは漁獲量で全体の4分の1、金額になおすと半分を占める重要な魚類である。」 《224》との統計がある。
琵琶湖の漁師は、「漁獲量で年に2千トン、20億円ほどの漁獲高もありますねん。」《221》と、最近 の概算総量を示していて、これを採用するなら、20億円の70%で14億円相当がアユによるものと考え られる。
琵琶湖は琵琶湖産アユを各地へ販売し、拡散させた移出の当事者で、永年にわたり膨大な売上利益を得てき たと思われる。
仮に、アユ漁の稼ぎが年収の70%であってみれば、「1913(大正2)年の学術成果」(物理的な大き さだけの証明)を大儀名文とし、己に不都合な近年の学者の説(特異な性質形成と遺伝的分化)等無視し、 経済効果を追求し続けているかのような印象を受ける。
(2−4−2)
第2にゲンゴロウブナの例をあげるなら、日本各地にゲンゴロウブナが導入され、釣られている。
「固有種は、琵琶湖が長い年月他の水域から隔離され、安定した環境が長く続いたことから形成されたと考 えられます。魚類や底生動物等を含め、現在50種以上の固有種が琵琶湖で確認されています。日本の他の 湖沼ではほとんど見られない固有種が琵琶湖に多く生育・生息するのは、琵琶湖が大きく、多様な生物が生 育・生息できる環境を今なお維持していることと、長い歴史を持つ古代湖であることが関係していると言え そうです。」《243》という滋賀県の説明通りだからこそ、琵琶湖の固有種であるはずなのに、本来そこ にいなかった他県の水域にも、大量かつ持続的に琵琶湖の固有種が移入されて良い道理はないと考える。
(2−5)
本章で展開したように、「国内移入種・国内導入種の拡散・蔓延時、または拡散・蔓延のおそれの生じた場 合において、在来種が受ける可能性のある生態学的脅威と影響」への予防保全対策は長期間放置されてきた。
このたびの「外来生物法」においても、「海外からの導入」に限定され、「国内移入種・国内導入種の拡散 ・蔓延時、または拡散・蔓延のおそれの生じた場合において、在来種が受ける可能性のある生態学的脅威と 影響」に関する問題は、永久に闇に葬り去られようとしているかのような印象があり、経済効果の名の下に、 国内導入され、今日も大量かつ持続的に移入されている「外来生物」(魚類)との平衡的感覚においても、 300万人ともいわれるオオクチバス釣り人に不公平感を生ずるおそれがある。
従って、オオクチバスを指定する必要はない。

★第3章★
理由(2)生息する水域の区別評価のない「外来生物法」下では、オオクチバスの指定に反対する。
(3−1)
「外来生物法」では、国内の水域は同一視され、湖沼(天然湖)と貯水池(人造湖)の区別がなされていな い。
財団法人国際湖沼環境委員会<ILEC>のニュースレターでは、「テクニカルセッションでは、世界の湖 沼(天然湖)と貯水池(人工湖)の管理に関する、世界湖沼ビジョンの関連についての議論を含むセッショ ンも開かれました。」《300》と区別使用され、その意味も明白である。
また、国内では国土交通省が「ダム名、人造湖の名前(貯水池名)」《301》と、使用して、ダムによる 人造湖を貯水池と称している。
ただし特に名が与えられた場合には、『矢木沢ダムの人造湖は「奥利根湖」といいます。』《301》とさ れている。
またダムは「ダム(原則として高さ15m以上)を収録した。」《302》等とされている。
「外来生物法」基本方針にある「河川」の他、「外来生物法」の「区域・水面」を、前記用法に習い、成因 ごとに評価し、湖沼(天然湖)と貯水池(人造湖)に区別することが肝要であり、本意見でも湖沼(天然湖) と貯水池(人造湖)の定義を用いる。
(3−2)
「外来生物法」においては「生態系等に係る被害」の防止が目的とされるが、ダム築造により出現した貯水 池ならびにその上流域さらに下流域の生態系と、ダム築造以前の同地域内の生態系を比較する時、前者と後 者が完全に同一である、つまり生態系は何ら変化せず守られている、との結論を導き出すことは容易ではな く、事実上不可能といっても差し支えないであろう。
なぜなら、ダム築造事業により該当地域の生態系は影響され、破壊されているからである。
(3−2−1)
水・土・空気などの広範な生態系の中から、貯水池における漁業影響に関する例として、水産庁の実施した ダムによる漁業影響に関するアンケートをあげるなら、「貯水池で漁業影響が出ているとする漁協の数は、 256漁協であった。河川漁協回収数566件に対する比率は45.2%、約半数の漁協が貯水池で漁業影 響が出ていると回答した。」
「山梨県の例では水位変動が大きく、産卵場がなくなり、奈良県ではふ化時期に水位低下があって障害が出 ていることが指摘された。」
「ダム工事完了後も土砂、岩の流入が続き漁場機能が回復しない例(岩手)、ヘドロが年間10cm位堆積 (千葉)、砂利がダム湖を埋めてしまう程に堆積し魚のすみつきが悪い(東京)など障害の例があげられて いる。」《303》などである。
(3−2−2)
ダムを含む水系における漁業影響のいくつかを具体的にあげるなら、建設省(当時)がダム事業者となった 信濃川水系における、漁業影響魚種は、さけ、にじます、いわな、やまめ、あめのうお、かわます、ます類、 あゆ、うぐい、こい、かじか、その他である。
さらに、利根川水系における、漁業影響魚種は、さけ、いわな、さくらます(やまめ)、かわます、ます類、 あゆ、しらうお、うなぎ、ぼら、うぐい、はや、まるた、こい、ふな、たなご、すずき、はぜ、やまとしじ み、えむし、である。
農林水産省がダム事業者となった加治川水系における、漁業影響魚種は、さくらます(やまめ)、あゆ、で ある。
さらに、嘉瀬川水系における漁業影響魚種は、やまめ、あゆ、うぐい、おいかわ、かわむつ、こい、である。
千葉県がダム事業者となった小櫃川水系における、漁業影響魚種は、あゆ、おいかわ、である。
さらに、養老川水系における、漁業影響魚種は、あゆ、うぐい、おいかわ、である。《303》
(3−3)
従って、「外来生物法」の「区域・水面」は成因ごとに、湖沼(天然湖)と貯水池(人造湖)に区別評価す べきであること、ならびに貯水池に元来の自然生態系は存在しないため、貯水池においては「外来生物法」 適用除外水域とすべきである。

★第4章★
理由(3)有効利用している地域の区別評価のない「外来生物法」下では、オオクチバスの指定に反対する。
(4−1)
「外来生物法」では、国内の地域は一様に「区域」とされ、オオクチバスをいわゆる害魚とする地域と、こ れとは反対に現に有効利用し、益魚として歓迎する地域の区別がなされていない。
「外来生物法」の「区域」を、「現に有効利用している地域」と「駆除を推進してゆく地域」に評価し、「 外来生物法」適用除外地域(現に有効利用している地域)と適用地域(駆除を推進してゆく地域)に区別す ることが肝要であり、本意見でも「適用除外地域」と「適用地域」の定義を用いる。
(4−2)
オオクチバスを「外来生物法」の指定対象とすることに反対する地域住民等の意思表示を真摯に受止め、 漁業権認定魚種としている地域、および請願書提出・陳情書提出等の行政上の手続きのなされた地域、なら びにオオクチバスを実質的な主たる資源とし、現に生業としてレンタルボート店・宿泊施設・飲食店等を営 む地域においては、地域住民の生業剥奪・地域経済崩壊という観点からの事情を格別に考慮し、適用除外地 域とする必要がある。
(4−2−1)
高速道路・湖畔駐車場・ボート店・宿泊施設・飲食店等の受入設備の完備した、適用除外地域をオオクチバ ス釣り人が、継続的・集中的に利用することにより、次の効果が見込まれる。
ひとつには、多くの適用除外地域の立地する山間の過疎地的地域における地域経済の維持・発展であって、 この中には雇用需要の創出増大も含まれる。
ふたつには、旧来、オオクチバス釣り人が押しかけていた適用地域における、オオクチバスの存在意義喪失 である。
第3に、適用地域の駆除で捕獲されたオオクチバスの受け皿として、適用除外地域の検討余地がある。
さらに、適用地域における、護岸・水門・堤防等の河川構造物・河川管理施設《400》《401》《40 2》への悪戯や損傷・畦道損壊・無余地駐車・農地へのゴミ放置・作物踏付け他の被害防止にも寄与できる 可能性が高いという副次的効果が期待できる。
(4−3)
従って、「外来生物法」の「区域」を「現に有効利用している地域」と「駆除を推進してゆく地域」に評価 し、「外来生物法」適用除外地域(現に有効利用している地域)と適用地域(駆除を推進してゆく地域)に 区別すべきであること、ならびに現に有効利用している地域においては「外来生物法」適用除外地域とすべ きである。
(4−4)
第3章に述べた、貯水池を適用除外水域とし、また、本章に述べた、現に有効利用している地域は適用除 外地域である旨が「外来生物法」に明記されるなら、大方のオオクチバス釣り人に混乱と不公平感を与えず、 地域住民・オオクチバス釣り人の理解と協力の下、適用地域において実効のあがる対応ができる可能性が高 まるものと思慮します。

★第5章★
もし指定対象に選定するのであれば、要望したい事項の詳細。
(5−1)
オオクチバスをもし「外来生物法」の指定対象に選定する場合にあっては、「外来生物法」の「区域・水面 」は成因ごとに、湖沼(天然湖)と貯水池(人造湖)に区別評価し、貯水池においては「外来生物法」適用 除外水域とするよう要望する。
(5−2)
オオクチバスをもし「外来生物法」の指定対象に選定する場合にあっては、「外来生物法」の「区域」を「 現に有効利用している地域」と「駆除を推進してゆく地域」に区別評価し、現に有効利用している地域にお いては「外来生物法」適用除外地域とするよう要望する。
(5−3)
オオクチバスをもし「外来生物法」の指定対象に選定する場合にあっては、「基本方針」に記載されている 「既に野外に存在することで飼養等又は譲渡し等に係らない特定外来生物を捕獲又は採取した直後に放つ等 の行為は本法第9条の対象とはならないが、捕獲又は採取後の特定外来生物の飼養等や譲渡し等については、 引き続き本法の規制が適用されることに留意する。」に加え、都道府県等による上乗せ規則ともいえる、「 キャッチ&リリース禁止」の条例や委員会指示を制定しないよう、環境省と農林水産省の責任で「外来生物 法」に附則の施行規則を定めて明文化するよう要望する。
(5−4)
特に、貯水池出現の前提となるダム建設事業が、国有地内・県有地内ではなく、民有地移転によってなされ た特別な事情を持つ水域にあって、かつ、現に有効利用している地域へは別格で特段の配慮を要望する。
これに該当する地域からは、たとえば、
『ご高察の通り、県内最大規模ダム築造事業は、湛水面積内外での大規模土木工事・関連橋脚25ケ所の河 床基礎工事・工事用重機走行等による地衣類や植生蹂躙・樹木皆伐・哺乳類鳥類昆虫類の営巣生活場所剥奪 ・流速水深他変化による在来魚類への生息環境打撃等、人の生命・生活を優先するあまり、やむを得ぬ大規 模環境破壊を伴います。
「法律」の目的とする、「生態系等に係る被害の防止」および「生物の多様性の確保」につき、少なくも亀 山湖および笹川湖は人造湖であり、「生態系」や「生物の多様性」は水体成立時から、事業者により破壊さ れている水面・水体であって、湛水後に新規参入したと推定されるオオクチバスにより「生態系等に係る被 害」が、さらに拡大する可能性は極めて低いものと思料します。』
『前述しました千葉県施工事業としての県内最大規模ダム築造に伴う、用地買収により、先祖伝来の家屋移 転・墳墓移転・田畑水没等を余儀なくされた特別な事情のある地域です。 同時に千葉県のご指導に従い、湖面利用の観光事業(釣り人用レンタルボート業)・宿泊業・また飲食業等 に活路を求め、生業とし開業した人々の住まう地域です。 房総丘陵の山あいに囲まれた亀山湖および笹川湖は、君津市によるリゾート指定地域にあり、新緑・紅葉の 季節をはじめとするハイキング・キャンプ・湖上クルーズ・ボート遊び・亀山湖上祭君津市民花火大会等、 四季を通じ多くの人が訪れます。 千葉県および君津市による親水思想整備がなされた野外教育の場としても活用されています。 亀山湖および笹川湖を主たる事業活動の場とし、地域の詳細実情を把握する私どもは、当水域の自主的秩序 形成を計り、永年に亘り実質的に有効利用して参りました。 亀山湖および笹川湖におけるオオクチバスは、健全な青少年釣り人の支持を得、地域経済に及ぼす影響は大 きなものがあります。』《500》、に示す通り、すでに地域住民の悲壮な声が要望書に託され国に提出さ れ、さらに陳情書ならびに請願書が地方自治体へ提出されている。

【参考文献リスト】
★第1章★
《100》「Bio」ホームページ
http://www.d7.dion.ne.jp/~y_takeo/biobook/biob049.htm

《101》「財団法人日本生態系協会」ホームページ
http://www.ecosys.or.jp/eco-japan/

《102》第2回移入種検討会議事概要
2000(平成12)年10月13日 環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/nature/inyu-kentokai/gaiyo02.html

《103》生物多様性条約第6回締約国会議決議の、 「生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原則(仮訳)」
2002(平成14)年4月 環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/council/13wild/y132-09/ref_01_5.pdf

★第2章★
《200》「移入種問題対応指針の検討について」
2000(平成12)年08月08日 環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/nature/inyu-kentokai/kentokai.html

《201》釣り餌大全
1979(昭和54)年08月20日初版、竹井 誠、産報出版
《202》秘伝の釣りエサ
1987(昭和62)年06月15日7版、阿部宗明・本間敏宏監修、二見書房
《203》原色淡水魚類検索図鑑
1963(昭和38)年12月10日初版、中村守純、北隆館
《204》原色日本淡水魚類図鑑
1963(昭和56)年02月01日全改訂新版6刷、宮地伝三郎他、保育社
《205》ヘラブナ釣り 全(へらぶな釣り 全)
1968(昭和43)年12月25日、鈴木魚心他、東京書店
《206》ヘラブナ・ドジョウ・スッポン他(養魚講座第5巻)
1974(昭和49)年11月05日6版、川村厚生他、緑書房
《207》川と湖の魚たち
1974(昭和49)年08月15日7版、川那部浩哉、中央公論社
《208》「琵琶湖水系の固有種」滋賀県琵琶湖研究所ホームページ
http://www.lbri.go.jp/rsh_dat/species/endspc-j.htm

《220》アユの生態
1978(昭和53)年05月25日、小山長雄、中央公論社
《221》わたし琵琶湖の漁師です
2002(平成14)年01月20日初版1刷、戸田直弘、光文社
《222》湖国びわ湖の魚たち
1986(昭和61)年03月20日改定版、滋賀県立琵琶湖文化館編、第一法規出版
《223》鮎(養魚講座第3巻)
1969(昭和44)年06月10日再版、島津忠秀他、緑書房
《224》アユの話
1960(昭和35)年11月15日第4刷、宮地伝三郎、岩波書店
《225》川の魚たちの歴史
1982(昭和57)年04月25日、前川光司他、中央公論社
《226》アユ その生態と釣り
1991年度版、石田力三、つり人社
《227》川と海を回遊する淡水魚−生活史と進化−
1994(平成06)年10月17日初版第1刷、後藤 晃他編、東海大学出版会
☆アユ−両側回遊から陸封へ、井口恵一朗
《230》イワナの顔
1993(平成05)年06月20日第1刷、白石勝彦他、山と渓谷社
《231》「山釣り紀行/源流岩魚写真館」ホームページ
http://www.asahi-net.or.jp/~jf3t-sgwr/ の中の、「自然と人間と文化INDEX」中の、「生物多様性を脅かす移入動物問題」 中の、「渓流魚の移植放流を考える」http://tokuzo.fc2web.com/inyushu/horyu.htm

《232》イワナのあくび 渓流の魚たち
1988(昭和63)年06月25日、河村宗郎、歴史春秋出版
《233》イワナとヤマメ 渓魚の生態と釣り
1996(平成08)年04月08日初版2刷、今西錦司、平凡社
《234》魚が変える湖の環境 ワカサギの導入により透明度が低下した十和田湖とその保全策
国立環境研究所 高村典子
http://www.nies.go.jp/biodiversity/members/noriko-t/mizusemi2002.html

《240》温暖化に追われる生き物たち 生物多様性からの視点
1997(平成09)年12月01日初版、堂本暁子・岩槻邦男他、築地書館
《241》移入・外来・侵入種 生物多様性を脅かすもの
2001(平成13)年12月25日初版、堂本暁子・岩槻邦男他、築地書館
《242》警告!ますます広がるブラックバス汚染
2003(平成15)年10月04日、秋月岩魚他、宝島社
《243》滋賀県琵琶湖環境部「琵琶湖と環境のホームページ」
http://www.pref.shiga.jp/biwako/koai/know/live/live_top.htm

《244》「琵琶湖漁業魚種別漁獲量」
滋賀県水産課ホームページ、「海面漁業生産統計調査」結果(近畿農政局滋賀統計情報事務所)
http://www.pref.shiga.jp/g/suisan/gyosyu-gyokakuryo.pdf

★第3章★
《300》「ニュースレター」No.44 October 2003
財団法人国際湖沼環境委員会ホームページ
http://www.ilec.or.jp/jp/newsletter/pdf/nl44j.pdf

《301》国土交通省関東地方整備局利根川ダム統合管理事務所ホームページ
http://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/faq/q5-2.htm

《302》ダム年鑑2002
2002(平成14)年03月12日、財団法人日本ダム協会編・発行
《303》ダムによる漁業影響に関するアンケート調査報告書
1984(昭和59)年3月、水産庁(受託者:全国内水面漁業協同組合連合会)

★第4章★
《400》河川工学
1996(平成08)年03月15日第6刷、高橋 裕、東京大学出版会
《401》川の風景を考える 景観設計ガイドライン(護岸)
1993(平成05)年09月05日初版、財団法人リバーフロント整備センター編、山海堂
《402》川の風景を考えるU 景観設計ガイドライン(水門、樋門)
1996(平成08)年04月20日初版、財団法人リバーフロント整備センター編、山海堂

★第5章★
《500》亀山湖・笹川湖のオオクチバスについて(要望書)
2005(平成17)年01月28日 亀山湖観光事業協同組合等10団体
http://www.mmjp.or.jp/kameyama-no-sato/index.html


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2005年04月05日、環境省発表
「特定外来生物の指定対象等に係るパブリックコメントの意見の理由と対応の考え方」より、
本意見そのもの、または本意見の含まれる意見と、国の考え方(回答)を対比しました
パブリックコメント
国の考え方(回答)
B他の外来魚やミドリガメなど、他の外来生物を指定しないでオオクチバスばかり指定するのはおかしい。 ニジマスは漁業権対象種だからはずされたのか。国内在来種の人為的分布拡大も問題。 指定するならすべての外来生物の輸入を禁止し、規制すべきだ。 生態系等に係る科学的知見を踏まえ、専門家会合で議論した結果、今回の指定対象として37種類が挙げられています。
A指定に反対だが、これ以上生息範囲が広がり続けることを防ぐことは理解できる。指定の必要がある場所だけ地域指定(ゾーニング)にしてほしい。 経済的・社会的に重要な所は、特区にしてほしい。 特に、人工的につくられたため池やダム湖、管理釣り場などは、純粋な自然環境と言えないので適用外にしてほしい。 トーナメントについても今まで通りできるようにしてほしい。  ゾーニングした上で、禁止区域から漁業権のある水域に、バスを移送するということも配慮してほしい。 本法では国内のある地域で生態系等に被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあれば、特定外来生物に指定し、全国的に飼養等が禁止されます。 どのような場合に飼養等の許可がなされるかは今後特定外来生物が指定されてから具体的な検討をします。 また、防除については、生態系等に係る被害の発生を防止するため必要があるときに適切に行うこととしています。 本法は地域を定めて飼養等の禁止を除外したり特区を設ける仕組みにはなっておりません。
★環境省発表「特定外来生物の指定対象等に係るパブリックコメントの意見の理由と対応の考え方」(別窓で環境省HPが開きます)

2005年05月25日 rev.02
2005年04月07日 rev.01
2005年02月22日「ザ・レイクチャンプ」よしさん

http://www.mmjp.or.jp/lake-champ この回答で納得できるはずもなく・・ Copyright by yoshisan.